宿泊業(ホテル・旅館)における在留資格【特定技能ビザ】の活用方法

在留資格 特定技能
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1 深刻な宿泊業における人手不足

 

総務省統計局「労働力調査」によれば、宿泊・飲食サービス業の就業者数は、2002年が396万人、その15年後の2017年が393万人とほぼ横ばいの状況です。

 

一方、観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、2012年には4億3950万人泊であった延べ宿泊者数は、2016年には4億9250万人泊と、5300万人泊も増加しています。

 

もちろん宿泊業界の人手不足は全業界の中でも突出して高い離職率(30%)など他の要因も影響していますが、就業者が横ばいであるのに仕事の総量がどんどん増えている状況が大きな要因となっていることに疑いはありません。

 

日銀の「雇用人員判断指数」によれば、2017年に全産業の中で最も人手不足であった業界は「宿泊・飲食サービス業」となっています。ここで「雇用人員判断指数」とは、企業の雇用人員の過不足を示す数値であり、日銀短観において雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」とした企業の割合を差し引いたものをいいます。マイナスの値が大きければ大きいほど人手不足であることを示しています。

 

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2 特定技能2号が認められていない宿泊業

 

宿泊業は、特定技能1号の対象となりましたが、特定技能1号は日本での就労が通算5年に限定されています。したがって、他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできませんので、外国人労働者がどんなに優秀であっても、定年まで勤めてもらうことはできません。

 

もし今後、宿泊業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用することもできますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、宿泊業は含まれていません。

 

3 就労ビザとしての特定技能を申請する際の宿泊業特有の事情

 

技能実習ビザは各ホテル・旅館ではなく事業協同組合が入国管理局に対し申請しますが、特定技能ビザは各ホテル・旅館が個別に入国管理局に申請をすることとなります。この場合、技能実習ビザにおいては事業協同組合の財務諸表の中身が問われるのに対して、特定技能ビザの場合は、各ホテル・旅館の経営状況が審査対象となります。したがって、小規模のホテルや旅館さんでは、入国管理局の審査に耐えられないケースがあるかもしれません。

特定技能ビザに限らず一般に、就労ビザは個人事業主よりも法人の方が、中小企業よりも大企業のほうが審査は通りやすいので、比較的慎重な申請が求められる業界となるでしょう。

 

4 技能実習(宿泊)から特定技能ビザへの移行

 

2018年11月現在、宿泊業は技能実習の対象ではありませんでしたが、改正入管法の施行と共に、技能実習2号の対象職種に指定される可能性があります。もし宿泊の技能実習が実現すると、技能実習ビザから特定技能1号へ移行することができるようになります。

そうすると、技能実習での3年と特定技能1号での5年、通算8年間、日本で宿泊業に従事できることとなります。

 

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5 海外からホテル・旅館従事者を特定技能ビザで招聘する

 

特定技能ビザが導入された直後の数年間は、宿泊の技能実習生は存在しませんから、海外から直接従業者を招聘することが行われるようになるでしょう。

この場合は、来日の前提として本国で特定技能試験に合格しなければなりません。特定技能1号は本来は技能実習とは関係のない就労ビザですから、本来労働者の国籍は問わないのですが、(農業の試験が7か国で行われるのと同様に)宿泊業の特定技能試験もごく限られた国でしか行われないということになると、世界のあらゆる国籍のかたと自由に雇用契約を結んで招聘することが難しくなる可能性があります。

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6 採用時期をずらすことで労働力を継続的に確保する

宿泊業は特定技能2号の対象業種ではないことから、5年後には必ず従業者が帰国します。それを見込んで時期をずらして複数名を雇用することで、継続的に労働力を確保することができます。

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7 在留資格「特定活動(インターンシップ)」から在留資格「特定技能」へ

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宿泊業界ではこれまで技能実習の対象職種として認められてこなかった経緯もあり、在留資格「特定活動」のインターンシップ制度を用いて、海外から大学生を受け入れることを試みてきました。しかしながら、インターンシップである以上、招聘するのは「学生」に限られ、就業体験が学業の一環でなければならず、在留期間は1年が限度であり、所属大学において日本での体験が正式に「単位」として認められることが必要です。

 

今後、特定技能1号で通算5年間の就労が正面から認められるようになれば、学生を労働力として期待するインターンシップは淘汰され、純粋なインターンシップのみが残るものと考えられています。

学生を労働力として期待していたインターンシップは、順次、特定技能1号に置き換わっていくでしょう。