漁業における在留資格【特定技能ビザ】の活用方法

特定技能 在留資格
監修・アルファサポート行政書士事務所

1 深刻な漁業における人手不足と高齢化

 

全国に6,298の漁業集落が存在し、生活の糧として漁業や養殖業が営まれているが、漁業分野における就業者は、平成10年に27 万7,000 人であったものが平成29 年には15 万3,000 人とおおむね半減、雇われ就業者も3年間で約1割減少しているほか、漁業分野の有効求人倍率は、漁船員2.52 倍(船員職業安定年報)、水産養殖作業員2.08 倍(職業安定業務統計)となっているなど、深刻な人手不足の状況にあります。

 

漁業分野の雇われ就業者の約2割を占める65 歳以上の熟練の高齢労働者が順次引退していくことから、毎年1,000 人の新規雇われ就業者を維持しても、今後も人手不足の深刻化が見込まれています。

 

2 特定技能2号が認められていない漁業

 

漁業は、特定技能1号の対象となりましたが、特定技能1号は日本での就労が通算5年に限定されています。したがって、他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできませんので、外国人労働者がどんなに働き手として優秀であっても、「後継者」になってもらうことはできません。あくまでも日本人である就業者のサポート役にとどまります。

 

もし今後、漁業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用し後継者にすることもできますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、漁業は含まれていません。

 

3 就労ビザとしての特定技能を申請する際の漁業特有の事情

 

技能実習ビザは各漁業の事業主体ではなく事業協同組合が入国管理局に対し申請しますが、特定技能ビザは各漁業の事業主体が個別に入国管理局に申請をすることとなります。この場合、技能実習ビザにおいては事業協同組合の財務諸表の中身が問われるのに対して、特定技能ビザの場合は、各漁業の事業主体の経営状況が審査対象となります。したがって、零細の漁業の事業主体さんでは、入国管理局の審査に耐えられないケースがあるかもしれません。

特定技能ビザに限らず一般に、就労ビザは個人事業主よりも法人の方が審査は通りやすいので、比較的慎重な申請が求められる業界となるでしょう。

 

4 漁業技能実習から特定技能ビザへの移行

 

2018年11月現在、漁業は技能実習の対象となっています。そして、この技能実習の修了者は、特定技能1号へ移行することができます。

そうすると、技能実習での3年と特定技能1号での5年、通算8年間、日本で農業に従事できることとなります。

 

在留資格 特定技能
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5 海外から漁業従事者を特定技能ビザで招聘する

 

特定技能ビザが導入された直後の数年間は、漁業技能実習生からの移行組が多くを占めるとみられていますが、その後、少しずつ海外から直接労働者を招聘することも行われるようになるでしょう。

この場合は、来日の前提として本国で特定技能試験に合格しなければなりませんが、政府は現在数か国でこの試験を行なう段取りをしています。特定技能1号は本来は技能実習とは関係のない就労ビザですから、本来労働者の国籍は問わないのですが、特定技能試験が当初この数か国でしか行われないということになると、海外から招へいする場合は事実上はこの数か国からの受入れが中心となるでしょう。

在留資格 特定技能
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6 採用時期をずらすことで労働力を継続的に確保する

漁業は特定技能2号の対象業種ではないことから、5年後には必ず労働者が帰国します。それを見込んで時期をずらして複数名を雇用することで、継続的に労働力を確保することができます。

 

在留資格 特定技能
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7  漁業分野における特定技能ビザの運用方針のポイント

 

以下では、2018年12月25日に閣議決定された「漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」のポイントを解説します。

 

7-1  漁業における受入上限人数について

漁業分野における特定技能ビザによる外国人就労者の受け入れ見込みは最大9000人で、これが上限となります。

政府の試算では、漁業分野では向こう5年間で2万人の人手不足が生じるため、9000人の受け入れでは焼け石に水との指摘もあり、事業者間で限られた外国人枠の奪い合いになる可能性が高いです。もし在留資格「特定技能」をもつ外国人従業員の雇用をお考えなのであれば、様子見されるよりも早めの着手が必要でしょう。

 

7-2  在留資格「特定技能1号」を取得できる農業における外国人の基準について

特定技能1号の在留資格を取得できる可能性がある者は、以下の試験の合格者又は農業分野の第2号技能実習を終了した者

 

(1)技能試験  「漁業技能測定試験(仮称)(漁業)」

         「漁業技能測定試験(仮称)(養殖業)」

(2)日本語試験 「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

 

【コメント】

日本語能力試験はN5からN1までの5段階評価で、N4は下から2番目のレベルです。「基本的な日本語を理解することができる」レベルで、「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」レベルを指します。日本語学校に通っている留学生などであれば比較的簡単にクリアできるでしょう。

 

7-3  在留資格「特定技能1号」を取得した外国人がすることができる業務

外国人が従事できる職務は、合格した試験区分に対応しています。

 

「漁業技能測定試験(仮称)(漁業)」に合格した外国人は、漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等の仕事に従事することができます。

 

「漁業技能測定試験(仮称)(養殖業)」に合格した外国人は、養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等の仕事に従事することができます。

 

7-4  特定技能1号をもつ外国人を雇用する形態

直接雇用だけでなく、労働者派遣事業者からの労働者派遣の受け入れも可能です。

 

他の産業と異なり農業と漁業にかぎって派遣労働形態が可能とされた理由は、漁業分野においては、同じ地域であっても、対象魚種や漁法等によって繁忙期・閑散期の時期が異なるとともに、漁業分野の事業島地域等に存在していること等の特性があり、地域内における業務の繁閑を踏まえた労働力の融通、雇用・支援の一元化といった漁業現場のニーズに対応する必要があるからとされています。

 

7-5  特定技能1号をもつ外国人を雇用する会社に求められる条件

全産業に共通の条件の他、漁業の事業者(特定技能所属機関)に特に求められる主たる条件は以下のとおりです。

なお、全産業に共通の条件については特定技能ビザ・総論をご参照ください。

 

1 漁業特定技能協議会(仮称)の構成員になること

2 派遣形態の場合、派遣元となる労働者派遣事業者は、地方公共団体又は漁業協同組合、漁業生産組合若しくは漁業協同組合連合会などが関与する者に限られること