農業 (法人・農家)における在留資格【特定技能ビザ】の活用方法

特定技能 在留資格
監修・アルファサポート行政書士事務所

1 深刻な農業における人手不足と高齢化

 

農林水産省の統計によれば、基幹的農業従事者の数は劇的に減少をしていて、2010年に205万人であったものが、4年後の2014年には37万人も減少し168万人となっています。わずか4年で2010年の基幹的農業従事者の18%が失われた計算です。

 

高齢化も深刻で、農業従事者のうち40代以下の占める割合はわずか14%で、50代以上の農業従事者が全体の86%を占めています。

 

この傾向は今後も拍車をかけて進んでいくものとみられており、農業の担い手の確保が喫緊の課題となっています。

 

政府の試算では、農業分野における特定技能1号ビザの取得者を初年度で7300人と見込んでいて、14業種の中で最多になる見込みです。

 

2 特定技能2号が認められていない農業

 

農業は、特定技能1号の対象となりましたが、特定技能1号は日本での就労が通算5年に限定されています。したがって、他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできませんので、外国人労働者がどんなに優秀であっても、「後継者」になってもらうことはできません。あくまでも日本人である就業者のサポート役にとどまります。

 

もし今後、農業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用し後継者にすることもできますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、農業は含まれていません。

 

3 就労ビザとしての特定技能を申請する際の農業特有の事情

 

技能実習ビザは各農家ではなく事業協同組合が入国管理局に対し申請しますが、特定技能ビザは各農家が個別に入国管理局に申請をすることとなります。この場合、技能実習ビザにおいては事業協同組合の財務諸表の中身が問われるのに対して、特定技能ビザの場合は、各農家の経営状況が審査対象となります。したがって、零細の農家さんでは、入国管理局の審査に耐えられないケースがあるかもしれません。2010年において、法人である農業経営体数が全農業経営体に占める割合は1%に過ぎませんので、大半は個人事業主として特定技能ビザを申請することとなります。

特定技能ビザに限らず一般に、就労ビザは個人事業主よりも法人の方が審査は通りやすいので、比較的慎重な申請が求められる業界となるでしょう。

 

4 農業技能実習から特定技能ビザへの移行

 

2018年11月現在、農業は「耕種農業」と「畜産農業」とが技能実習の対象となっています。そして、この技能実習の修了者は、「耕種農業」「畜産農業」双方ともに特定技能1号へ移行することができます。

農林水産省によると、すでに技能実習を終え、特定技能1号に試験なしで移行できる元実習生が2017年度までに計約6万8000人いるとされ、この元実習生の受け入れが想定されています。

そうすると、技能実習での3年と特定技能1号での5年、通算8年間、日本で農業に従事できることとなります。

 

在留資格 特定技能
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5 海外から農業従事者を特定技能ビザで招聘する

 

特定技能ビザが導入された直後の数年間は、農業技能実習生からの移行組が多くを占めるとみられていますが、その後、少しずつ海外から直接労働者を招聘することも行われるようになるでしょう。

この場合は、来日の前提として本国で特定技能試験に合格しなければなりませんが、政府は現在7か国でこの試験を行なう段取りをしています。その7か国とは、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、カンボジア、ミャンマーです。特定技能1号は本来は技能実習とは関係のない就労ビザですから、本来労働者の国籍は問わないのですが、特定技能試験が当初この7か国でしか行われないということになると、海外から招へいする場合は事実上はこの7か国からの受入れが中心となるでしょう。

在留資格 特定技能
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6 採用時期をずらすことで労働力を継続的に確保する

農業は特定技能2号の対象業種ではないことから、5年後には必ず労働者が帰国します。それを見込んで時期をずらして複数名を雇用することで、継続的に労働力を確保することができます。

 

在留資格 特定技能
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7  農業分野における特定技能ビザの運用方針のポイント

 

以下では、2018年12月25日に閣議決定された「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」のポイントを解説します。

 

7-1  農業における受入上限人数について

農業分野における特定技能ビザによる外国人就労者の受け入れ見込みは最大3万6500人で、これが上限となります。

政府の試算では、農業分野では向こう5年間で13万人の人手不足が生じるため、4万人弱の受け入れでは焼け石に水との指摘もあり、事業者間で限られた外国人枠の奪い合いになる可能性が高いです。もし在留資格「特定技能」をもつ外国人従業員の雇用をお考えなのであれば、様子見されるよりも早めの着手が必要でしょう。

 

7-2  在留資格「特定技能1号」を取得できる農業における外国人の基準について

特定技能1号の在留資格を取得できる可能性がある者は、以下の試験の合格者又は農業分野の第2号技能実習を終了した者

 

(1)技能試験  「農業技能測定試験(仮称)(耕種農業全般)」

         「農業技能測定試験(仮称)(畜産農業全般)」

(2)日本語試験 「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

 

【コメント】

日本語能力試験はN5からN1までの5段階評価で、N4は下から2番目のレベルです。「基本的な日本語を理解することができる」レベルで、「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」レベルを指します。日本語学校に通っている留学生などであれば比較的簡単にクリアできるでしょう。

 

7-3  在留資格「特定技能1号」を取得した外国人がすることができる業務

外国人が従事できる職務は、合格した試験区分に対応しています。

 

「農業技能測定試験(仮称)(耕種農業全般)」に合格した外国人は、耕種農業における栽培管理、農産物の集出荷・選別等の仕事に従事することができます。

 

「農業技能測定試験(仮称)(畜産農業全般)」に合格した外国人は、畜産農業における飼養管理、畜産物の集出荷・選別等の仕事に従事することができます。

 

7-4  特定技能1号をもつ外国人を雇用する形態

直接雇用だけでなく、派遣会社からの労働者派遣の受け入れも可能です。

 

他の産業と異なり農業と漁業にかぎって派遣労働形態が可能とされた理由は、①冬場は農作業ができないなど季節による作業の繁閑がある、②同じ地域であっても、作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なるなどの特性があり、農繁期の労働力の確保や複数の産地間での労働力の融通といった農業現場のニーズに応える必要があるからとされています。

 

7-5  特定技能1号をもつ外国人を雇用する会社に求められる条件

全産業に共通の条件の他、農業の事業者(特定技能所属機関)に特に求められる主たる条件は以下のとおりです。

なお、全産業に共通の条件については特定技能ビザ・総論をご参照ください。

 

1 農業特定技能協議会(仮称)の構成員になること

2 直接雇用の場合、労働者を一定期間以上雇用した経験があること

3 派遣形態の場合、以下の要件を満たすこと

・派遣元事業者は、農業現場の実情を把握しており特定技能外国人の受け入れを適正かつ確実に遂行する能力を有していること

・派遣先事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験がある者、又は派遣先責任者講習等を受講したものを派遣先責任者とする者であること

 

【コメント】

過去に労働者を一定期間以上雇用した経験が「ない」事業者は、特定技能外国人を直接雇用することはできず、派遣会社からの受け入れをすることができるのみとなります。この場合も、派遣先責任者が派遣先責任者講習などの講習を受講する必要があります。

過去に労働者を一定期間以上雇用した経験が「ある」事業者は、特定技能外国人を直接雇用することも、派遣会社からの受け入れをすることもできます。