宿泊業(ホテル・旅館)における在留資格【特定技能ビザ】の活用方法

在留資格 特定技能
監修・アルファサポート行政書士事務所

0 ホテル・旅館業における外国人雇用の全体像

 

すでに広く知られているように、2019年4月に外国人雇用にかかわる大きな制度改正があり、ホテル・旅館業(宿泊業)もその対象業種となりました。また、ほとんど報道されていないため見過ごされがちですが、実は2019年6月にも「特定活動ビザ」の分野で画期的な制度改正がありました。

 

次の図が、2019年3月までと、6月以降ののホテル・旅館業をとりまく外国人雇用と就労ビザの状況を表しています。2019年3月までは不可能であった職種(✖印のついている職種)で、外国人雇用が可能になっていることがお分かりいただけるでしょう。

 

アルファサポート行政書士事務所は東京港区にあるため近隣の外資系・日系のホテル様とのお付き合いが多いのですが、皆様すでに動かれてます。

 

本記事は、2019年4月に新設された特定技能ビザについて解説しています。2019年6月の法改正(特定活動ビザ)については、記事の最後でご紹介している別の記事(>>ホテル・旅館の外国人雇用)をご参照ください。

 

宿泊 特定技能
職種と在留資格の対応関係は簡略化して表現しています。細かな要件にご注意ください。

1 深刻な宿泊業における人手不足

 

総務省統計局「労働力調査」によれば、宿泊・飲食サービス業の就業者数は、2002年が396万人、その15年後の2017年が393万人とほぼ横ばいの状況です。

 

一方、観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、2012年には4億3950万人泊であった延べ宿泊者数は、2016年には4億9250万人泊と、5300万人泊も増加しています。

 

もちろん宿泊業界の人手不足は全業界の中でも突出して高い離職率(30%)など他の要因も影響していますが、就業者が横ばいであるのに仕事の総量がどんどん増えている状況が大きな要因となっていることに疑いはありません。

 

日銀の「雇用人員判断指数」によれば、2017年に全産業の中で最も人手不足であった業界は「宿泊・飲食サービス業」となっています。ここで「雇用人員判断指数」とは、企業の雇用人員の過不足を示す数値であり、日銀短観において雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」とした企業の割合を差し引いたものをいいます。マイナスの値が大きければ大きいほど人手不足であることを示しています。

 

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2 特定技能2号が認められていない宿泊業

 

宿泊業は、特定技能1号の対象となりましたが、特定技能1号は日本での就労が通算5年に限定されています。したがって、他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできませんので、外国人労働者がどんなに優秀であっても、定年まで勤めてもらうことはできません。

 

もし今後、宿泊業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用することもできますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、宿泊業は含まれていません。

 

3 就労ビザとしての特定技能を申請する際の宿泊業特有の事情

 

技能実習ビザは各ホテル・旅館ではなく事業協同組合が入国管理局に対し申請しますが、特定技能ビザは各ホテル・旅館が個別に入国管理局に申請をすることとなります。この場合、技能実習ビザにおいては事業協同組合の財務諸表の中身が問われるのに対して、特定技能ビザの場合は、各ホテル・旅館の経営状況が審査対象となります。したがって、小規模のホテルや旅館さんでは、入国管理局の審査に耐えられないケースがあるかもしれません。

特定技能ビザに限らず一般に、就労ビザは個人事業主よりも法人の方が、中小企業よりも大企業のほうが審査は通りやすいので、比較的慎重な申請が求められる業界となるでしょう。

 

4 技能実習(宿泊)から特定技能ビザへの移行

 

2018年11月現在、宿泊業は技能実習の対象ではありませんでしたが、改正入管法の施行と共に、技能実習2号の対象職種に指定される可能性があります。もし宿泊の技能実習が実現すると、技能実習ビザから特定技能1号へ移行することができるようになります。

そうすると、技能実習での3年と特定技能1号での5年、通算8年間、日本で宿泊業に従事できることとなります。

 

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5 海外からホテル・旅館従事者を特定技能ビザで招聘する

 

特定技能ビザが導入された直後の数年間は、宿泊の技能実習生は存在しませんから、海外から直接従業者を招聘することが行われるようになるでしょう。

この場合は、来日の前提として本国で特定技能試験に合格しなければなりません。特定技能1号は本来は技能実習とは関係のない就労ビザですから、本来労働者の国籍は問わないのですが、(農業の試験が7か国で行われるのと同様に)宿泊業の特定技能試験もごく限られた国でしか行われないということになると、世界のあらゆる国籍のかたと自由に雇用契約を結んで招聘することが難しくなる可能性があります。

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6 採用時期をずらすことで労働力を継続的に確保する

宿泊業は特定技能2号の対象業種ではないことから、5年後には必ず従業者が帰国します。それを見込んで時期をずらして複数名を雇用することで、継続的に労働力を確保することができます。

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7 在留資格「特定活動(インターンシップ)」から在留資格「特定技能」へ

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宿泊業界ではこれまで技能実習の対象職種として認められてこなかった経緯もあり、在留資格「特定活動」のインターンシップ制度を用いて、海外から大学生を受け入れることを試みてきました。しかしながら、インターンシップである以上、招聘するのは「学生」に限られ、就業体験が学業の一環でなければならず、在留期間は1年が限度であり、所属大学において日本での体験が正式に「単位」として認められることが必要です。

 

今後、特定技能1号で通算5年間の就労が正面から認められるようになれば、学生を労働力として期待するインターンシップは淘汰され、純粋なインターンシップのみが残るものと考えられています。

学生を労働力として期待していたインターンシップは、順次、特定技能1号に置き換わっていくでしょう。

 

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8 宿泊業分野における特定技能ビザの運用方針のポイント

 

以下では、2018年12月25日に閣議決定された「宿泊業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」のポイントを解説します。

 

8-1  宿泊業における受入上限人数について

宿泊業分野における特定技能ビザによる外国人就労者の受け入れ見込みは最大2万2千人で、これが上限となります。

政府の試算では、宿泊業分野では向こう5年間で10万人の人手不足が生じるため、2万人程度の受け入れでは焼け石に水との指摘もあり、事業者間で限られた外国人枠の奪い合いになる可能性が高いです。もし在留資格「特定技能」をもつ外国人従業員の雇用をお考えなのであれば、様子見されるよりも早めの着手が必要でしょう。

 

8-2  在留資格「特定技能1号」を取得できる宿泊業における外国人の基準について

特定技能1号の在留資格を取得できる可能性がある者は、以下の試験の合格者となります。

(1)技能試験  「宿泊業技能測定試験(仮称)」

   ※2019年4月からまず日本国内で実施し、その後海外で実施予定(2019年1月25日現在)

(2)日本語試験 「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

 

【コメント】

少々気になる点は、「宿泊業分野の第2号技能実習を修了した者」との記載がない点です。2018年末時点では、宿泊業分野は技能実習の対象ではありませんが、2019年4月以降、技能実習制度が宿泊業に拡大されるとの一部報道がありました。しかしまだ検討段階の可能性があります。というのも、外食産業も同様に現時点で技能実習が行われていない業種ですが、外食産業の分野別運用方針には、「外食業分野の第2号技能実習を終了した者」と明記されており、技能実習2号対象職種となる早期の可能性が指摘されていることと対照的だからです。

 

日本語能力試験はN5からN1までの5段階評価で、N4は下から2番目のレベルです。「基本的な日本語を理解することができる」レベルで、「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」レベルを指します。日本語学校に通っている留学生などであれば比較的簡単にクリアできるでしょう。

 

8-3  在留資格「特定技能1号」を取得した外国人がすることができる業務

宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務に従事することができます。

 

これまで、ホテルや旅館の「フロント業務」や「企画・広報業務」は、例外的な場合を除いて技術・人文知識・国際業務ビザを取得した外国人しか行なうことができませんでしたが、熟練した技能が無く、学歴が無い外国人でも、上記の試験に合格した者であればこれらの職に就くことができます。なお、接客は可能ですが、風営法上の「接待」は行なうことができません。

 

8-4  特定技能1号をもつ外国人を雇用する会社に求められる条件

全産業に共通の条件の他、宿泊業の会社(特定技能所属機関)に特に求められる主たる条件は以下のとおりです。

なお、全産業に共通の条件については在留資格「特定技能」総論をご参照ください。

 

1 旅館・ホテル営業の許可を受けたものであること

2 宿泊分野における外国人材受入協議会(仮称)の構成員となること

2 風俗営業法上の「施設」に該当しないこと

3 風俗営業法上の「接待」を行なわせないこと

 

8-5 特定技能1号をもつ外国人を雇用する形態

フルタイムの直接雇用に限られ、派遣会社からの派遣は受け入れできません。

 


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