2020年7月2日更新
行政書士 佐久間毅
特定技能ビザという新しい在留資格の創設で、ずいぶんと入管法の改正が話題になりましたよね?
そうだね。今回の入管法の改正は外国人に単純労働を解禁するという、戦後の長い一貫した政策の転機となるからだね。
人手不足の建設業界や介護業界など14業種に外国人の就労が解禁されるんだ。
【解説】
2019年4月から新しい在留資格である「特定技能」が新設されました。特定技能ビザが創設されると、これまでは一部の例外を除いて外国人が働くことのできなかった、建設業界や造船業界、宿泊業界、外食産業などで、外国人が働くことができるようになります。
受け入れ可能な業種は入管法という法律で規定されるのではなく、法務省令で定められます。
したがって、今後「深刻な人手不足である」と認められれば、法改正に比べればはるかに容易な方法によって、他の産業にも拡大していく可能性があります。
特定技能ビザは、就労ビザの一種と聞いていますが、どのような業種に解禁されますか?
特定技能ビザは1号と2号の2種類に分かれているんだけど、1号の対象となるのが14業種、2号の対象となるのが2業種とされているよ。
これまでの就労ビザが受け入れて来た職業から、一気に範囲が拡大するんだ。
【解説】
特定技能ビザは2種類に分かれていて、原則として1号の修了者が試験をパスすると2号に進むことができます。
ただし2号の対象は2業種のみとされていますので、2号対象外の12業種で働いてきた外国人は1号が終了すると本国に帰国します。
特定技能ビザ1号の対象業種
①建設業、②造船・舶用工業、③自動車整備業、④航空業、⑤宿泊業、⑥介護、⑦ビルクリーニング、⑧農業、⑨漁業、⑩飲食料品製造業、⑪外食業、⑫素形材産業、⑬産業機械製造業、⑭電気電子情報関連産業
特定技能ビザ2号の対象業種
①建設業、②造船・舶用工業
>>業界別!在留資格「特定技能ビザ」の活用方法を、建設、宿泊、外食、農業の業種別に検討してみた
この記事では、特定技能ビザが許可される14業種を4つにグルーピングし、建設業、宿泊業、外食産業、農業における在留資格「特定技能」の活用方法について業界ごとに詳しく考察しています。
①介護 >>「介護 特定技能」
②外食業 >>「外食業 特定技能」
③建設業 >>「建設業 特定技能」
④宿泊業 >>「宿泊業 特定技能」
⑤ビルクリーニング >>「ビルクリーニング 特定技能」
⑥農業 >>「農業 特定技能」
⑦飲食料品製造業 >>「飲食料品製造業 特定技能」
⑧素形材産業 >>「素形材産業 特定技能」
⑨造船・舶用工業 >>「造船・舶用工業 特定技能」
⑩漁業 >>「漁業 特定技能」
⑪自動車整備業 >>「自動車整備業 特定技能」
⑫産業機械製造業 >>「産業機械製造業 特定技能」
⑬電気電子情報関連産業 >>「電気電子情報関連産業 特定技能」
⑭航空業 >>「航空業 特定技能」
特定技能ビザの1号と2号の違いはどこにあるのでしょうか?
一番大きな違いは、どれだけ日本にいられるかという滞在期間だ。特定技能1号だと、どんなに長くても5年しかいられないのに対し、特定技能2号だと更新の条件を満たす限り回数の制限なく更新ができるから、その会社で定年まで働くことも可能になるし、家族を呼び寄せることもできるよ。
【解説】
特定技能ビザ1号と2号の違いは、1号が通算5年までしか日本にいられないビザなのに対して、2号には日本滞在の期間に制限が無いという点です。
この違いが、家族の帯同にも紐づいています。1号は5年で帰国することが前提なので、日本に家族を連れてくることはできません。
これに対し2号は、回数制限のない更新に道が開かれているため、本国から家族を日本に連れてくることができます。
ここでいう家族とは、配偶者と子を意味し、親や兄弟姉妹は含まれません。この点は、他の多くの就労ビザと共通しています。
特定技能1号を取得する外国人に求められる技能水準は「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」です。
これは、相当期間の実務経験等を要する技能であって、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものを言います。
特定技能2号を取得する外国人に求められる技能水準は「熟練した技能」です。
これは、長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能とされています。
例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものを言います。
これまで、建前はともかくとして、事実上の労働者として技能実習生を受け入れてきたわけですよね?
今後は特定技能ビザによる受け入れと技能実習ビザによる受け入れ、どちらを利用すべきでしょうか?
特定技能と技能実習のいずれか一方の対象でしかない業界の場合は、“使い分け”を考える余地はないけれど、
両方の対象である業界の場合には、特定技能ビザのほうが圧倒的に使いやすい制度であることは間違いないよ。
これまで技能実習の面倒なスキームに辟易していた会社は、在留資格「特定技能」へ移行していくだろうね。
【解説】
特定技能と技能実習の比較①:制度の目的
アルファサポート行政書士事務所は外国人技能実習を事業のひとつとしている事業協同組合の設立を複数お手伝いしてきた関係で、事業協同組合や技能実習実施企業とのお付き合いがありますが、皆さんの特定技能ビザへの関心は非常に高いものがあり、ご質問も多くいただきます。
事業協同組合さんの中には、特定活動ビザの誕生は、事業の死活問題であると捉えているところもあります。
そもそも技能実習制度は「国際貢献」を目的とした制度であり、日本の優れた技術を身につけていただいて、母国の産業発展に活かしてもらうことを目的としており、それ以上でもそれ以下でもありません。本来は労働力として期待するには無理がありすぎる制度です。
また事業協同組合設立も、設立した初年度は外国人技能実習事業を行うことができず、定款にうたうことすらできないという大変高いハードルが課されています。
しかしながら、外国人技能実習生を受け入れている企業の規模は、2017年のJITCO統計では10人未満が50.4%、10~19人が15.6%、20~49人が15.3%となっており、
技能実習生受入企業の実に66%が従業員19人以下の中小零細企業で、本音のところでは「国際貢献」よりも「人手不足の解消」としてこの制度を使ってきた現実があります。
いっぽう特定技能ビザは、初めからストレートに日本の人手不足の解消を目的としています。国際貢献という相手国ファーストの制度ではなく、日本ファーストの制度であるとも言えるでしょう。
特定技能と技能実習の比較②:受入国
技能実習に詳しくない行政書士さんを含め一般にあまり知られていない事実ですが、技能実習生の受入国は2018年11月1日時点で15か国に限られています。
技能実習は「国際貢献」のしくみなので、日本国と相手国との国家間の取り決めが必要で、取り決めが無い国からは技能実習生を呼ぶことはできません。
現在、技能実習生として迎えることができる可能性がある国は、インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ペルー、ミャンマー、モンゴル、ラオスです。
以前、知り合いの建設業者様から「カザフスタンから技能実習生を受け入れたい」とのご相談を受けたことがあります。
ウズベキスタンからは可能性がありますが、カザフスタンは上記15か国に含まれていないので当時呼ぶことはできませんでした。
しかし今後は、カザフスタン人も理論上は特定技能ビザで招へいすることができるようになります。特定技能ビザは就労ビザなので、外国人の国籍は問わないのです。
【追記】政府は在留資格「特定技能1号」を取得するために合格することが必須である日本語試験を、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)としています。国際交流基金日本語基礎テストは、日本語能力試験のように段階的なレベルは設定されていません。2020年7月現在、国際交流基金日本語基礎テストはベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ネパール、モンゴルの7か国での実施が予定されています。いっぽう、日本語能力試験は日本国内の主要都市と世界各国で実施されています。年に一度しか実施されない国もありますのでスケジューリングに注意しましょう。
〇関連サイト
- 国際交流基金日本語基礎テスト「各国の実施情報」
- 日本語能力試験「海外の実施都市」
特定技能ビザは就労ビザなので国籍は問わないのが原則ですが、例外的に日本からの退去強制者の受け入れを拒んできた一部の国からは招聘することができないこととされています。この措置は、特定技能ビザで入国した外国人が日本で犯罪を犯すなどして退去強制処分になっても、相手国が受け入れを拒否する方針を明らかにしている場合、いつまでも日本に留まることとなるため不都合であるからと考えられます。
現在は「告示」によってイランが指定されていますので、イラン人であるかたを特定技能人材として雇用することはできません。イラン人であるかたは、日本国内において技能試験を受験することもできないこととされています。
さらに不法滞在者が多い国の出身者については、受け入れ拒否という形で門前払いはしないものの、ビザ審査を厳格にする方針が表明されています。法務省によれば、2020年1月1日現在の不法滞在者数の上位10か国は、多い国から順番に、ベトナム、韓国、中国、タイ、フィリピン、インドネシア、台湾、マレーシア、スリランカ、シンガポールとなっています。
この措置は特定技能ビザ1号は最長でも5年しか日本に滞在することができないところ、5年の期間満了後も本国に帰国せず、そのまま不法残留となる可能性を考慮してのことと思われます。
特定技能と技能実習の比較③:スキーム
特定技能ビザは就労ビザですから、外国人労働者と受入企業だけがスキームを構成します。この両者のあいだで雇用契約が成立すれば、最低限の条件が整います。
外国人の生活を支援するために登録支援機関という組織を使うこともできますが、利用は任意です(受入企業が自社で行っても構いません)。
受入企業は誰かにお膳立てしてもらうことはできませんが、出入国在留管理局への特定活動ビザ申請も自社で行うこととなり、自らが主体的に行動できるスキームと言えます。
いっぽう、技能実習は5当事者が登場する非常に複雑な制度です。全体の96.6%を占める団体監理型の場合、まず相手国の送出機関(帰国後に働く会社)と事業協同組合が契約を結び、その契約に受入企業と技能実習生が乗っかる仕組みです。ですから、受入企業が自らコントロールできる幅はおのずと限界があり、出入国在留管理局(旧入国管理局)への技能実習ビザの申請も、受入企業ではなく事業協同組合が行ないます。そしてさらに、外国人技能実習機構が技能実習計画の認定などを通じて、受入企業や事業協同組合をチェックする体制になっています。
組合費を支払えばあとは事業協同組合がお膳立てしくれる制度とも言えますが、受入企業が自ら動いて決定できる裁量の幅は非常に小さいと言えるでしょう。いちいち技能実習生との間に、事業協同組合をかませないといけないからです。
特定技能ビザは魅力的ですが、はじめは技能実習をしていただいて、終了後に特定技能ビザに「変更」することはできないのですか?
技能実習制度の本来の趣旨は、身につけた技術を本国の送出し機関で活かしてもらうということだから、技能実習を修了した人を特定技能で受け入れて日本の人手不足解消に使うのは制度趣旨を根本から否定することになるはずなんだけど、認められることになったんだ。
そうすると、技能実習の終了後にいったん帰国するかどうかは別論として、技能実習5年、特定技能1号で5年、合計10年日本に滞在するコースも人気になるかもね。
【解説】
特定技能ビザ1号は本来、技能実習制度とはまったく関係のない制度ですので、①ある程度日常会話ができ生活に支障がないレベルの日本語能力と、②相当程度の知識又は経験があることを確かめる試験に合格した人材であれば、技能実習の経験の有無に関係なく海外から招へいすることができます。その意味で、通常の就労ビザと同じです。
一方で、平成30年6月15日に閣議決定された「骨太の方針2018」においては、「技能実習(3年)を修了した者については、上記試験等を免除し、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとする」とされていることから、技能実習2号を修了した外国人が特定技能ビザ1号を取得するルートが想定されています。
衆議院の法務委員会の審議の過程で政府が明らかにしたところによると、技能実習生から特定技能ビザへ移行する人が、特定技能ビザで滞在する人全体に占める割合は、2019年度から5年間ではおよそ45%で、12万人から15万人になるものと予想されています。
技能実習2号を終了した方は、本国に帰国せず日本にいながらにして在留資格を「技能実習」から「特定技能」に変更許可申請をすることができます。なお、技能試験と日本語試験が免除されるためには「技能実習2号を良好に修了している」ことが必要ですが、「良好に修了している」とは、技能実習を2年10カ月以上修了しているものであって、技能検定3級もしくはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験の合格者または実習実施者等が作成した評価調書等により技能実習実施中の出勤状況や技能の修得状況等を総合的に考慮し、欠勤がないなどの状況が認められることをいいます。
【追記】
在留資格「特定技能2号」を取得するために必要な「熟練レベルの技能」の有無を判定する技能試験は、建設業と造船業の2業種において2021年度から実施される予定です(2018年12月19日追記)。
特定技能ビザを取得した外国人は転職はできるのでしょうか?
特定技能ビザに限らず他の就労ビザにおいても、制約はあるものの転職じたいは可能とされているよ。
この点は転職という概念のない技能実習と大きく異なるところだね。
【解説】
技能実習の制度では、転職に相当する実習先企業の変更は認められていませんが、特定技能ビザの保有者は「同一の業務区分内」であれば転職をすることができます。
「同一の業務区分内」とは、例えば介護分野の特定技能外国人は、介護業界の中であれば転職ができるという意味です。したがって、介護分野の特定技能外国人が、建設会社に転職するようなことはできません。この場合は、業務区分が同一でないからです。
また一部の特定技能外国人は業務区分を超えて転職することもできます。これが許されるのは「試験等によってその技能水準の共通性が確認されている」場合です。一例をあげると、経産省所管の3つの産業(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)では共通の技能を活かすことができ、例えば「製造分野特定技能1号評価試験(溶接)」の合格者は、この3つの産業のすべてで働くことができるものとされています。そうすると「製造分野特定技能1号評価試験(溶接)」に合格し、当初は素形材産業の会社で働いていた外国人が、産業機械製造業の会社に転職しても、溶接という同じ技能を活かすことができるので問題がないこととなります。
心配されている、地方の会社に雇用された外国人が賃金差を求めて大都市圏の会社に転職してしまう事態については、外国人にも転職の自由を含めた職業選択の自由があるため、憲法上保証された人権に制限をかけることは難しく、対策は簡単ではなさそうです。
2018年12月25日に閣議決定された「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」においても「特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することを防止する上で、必要な措置を講じる」としていますが、その措置の中身が明確でなく具体性はありません。
特定技能ビザで外国人を受け入れるとき、直接雇用しないといけませんか?
派遣社員で受け入れることもできるのですか?
就労ビザのなかには、エンジニアのように派遣形態での採用で大丈夫なビザもあるけれど、特定技能ビザの場合には、農業と漁業以外の業種では直接雇用しかできないよ。
【解説】
特定技能外国人の雇用はフルタイムが原則で、農業と漁業以外の業界においては、直接雇用のみが認められ、派遣形態は認められません。農業分野において労働者派遣形態が認められるのは、①冬場は農作業ができないなど、季節による作業の繁閑がある、②同じ地域であっても、作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なるといった特性があり、農繁期の労働力の確保や複数の産地間での労働力の融通といった農業現場のニーズに対応する必要があるためと説明されています。
特定技能ビザで外国人が単純労働もできるようになると、その業界の日本人にとっては雇用が奪われかねず脅威ですよね?
たしかにそうだよね。ただ、ここまで政府が特定技能ビザの導入を急いでいるのには、外国人を受け入れないと、その産業や会社自体がもたないと考えているからじゃないかな。
産業が廃れてしまったり、会社が倒産してしまえば、日本人労働者の仕事も確保できないわけだから難しい問題だね。
【解説】
改正入管法では、無制限に外国人労働者が流れ込まないように、一定の措置を設けています。
それは、業界を管轄する各省の大臣は、その業界において人材が確保され、人材不足が解消されたと認めるときは、法務大臣に対し、一時的に特定技能の在留資格認定証明書の交付を停止する措置を求めることができるとしています。
そして、再びその業界において「人材が不足する」と認められた時には、所管の大臣が法務大臣に対し、特定技能の在留資格認定証明書の交付を再開する措置を求めることができるとしています。
つまり、人材不足が続けば外国人労働者に特定技能ビザが交付されるが、労働市場において需給が均衡すれば、外国人労働者の流入はストップします。
この仕組みは他の就労ビザにはみられない仕組みで、一定の評価はできるでしょう。
しかしながらこの仕組みの問題点は、所管官庁が人手不足が解消されたものと判断し法務大臣に在留資格認定証明書交付の停止を求めた場合、その事実は公表されるのかという点にあります。この点は入管法の法文からは明らかではありません。
確かにマクロの見地からは、人手不足が解消された時点でその業界に対する外国人労働者の流入がストップすれば、労働力が過剰供給となって賃金が低下することもなく不都合はないようにも思えます。
しかしながら、特定技能ビザの交付が停止されたことが世間に公表されないのであれば、許可の見込みがないにもかかわらず、受け入れを希望する企業が労働契約(入管法上の「特定技能雇用契約」)を結び、出入国在留管理局への在留資格申請をしてしまうのであり、企業に無駄な経済活動をさせてしまうこととなります。
労働市場において需給が一致して人手不足が解消され、特定技能ビザを申請しても許可の可能性がないのであれば、その事実を公表してくれなければ、企業としては無駄骨となり、たまったものではありません。
特定技能ビザは通算で5年だけ日本に滞在できるとのことですが、入国から5年後にきちんと帰国してくれるものでしょうか。
そうだね。5年だけとしているのは、永住への道を開かないことで「移民政策」ではないことの証としているんだろうけど、逃げ出しちゃって不法残留や不法就労をつづけるケースは予想されるよね。
対策のひとつとして外国人と結ぶ雇用契約書の中には、「期間が満了した外国人の出国を確保する措置」を盛り込むことが必要とされているよ。
【解説】
外国人労働者が特定技能ビザ1号の雇用期間を満了すると、他の在留資格への変更が認められない限り帰国しなければなりません。
改正入管法では「帰国を確保する措置」を雇用契約書に盛り込むよう求めています。それを受けて法務省令では、万が一、雇用期間の満了時に外国人が帰国費用を工面できないときには、受け入れ企業が帰国の費用を肩代わりすることを求めています。
また、現時点で不法滞在者が多い国の国籍者の場合には、そもそもの入口のところで、特定技能ビザを交付するかどうかについて厳格な審査を行うこととしています。
さらには、医療機関にかかるときには、健康保険証のみならず在留カードを提示することを求める方針です。これは外国人のあいだで健康保険証の使いまわしが行われていることから、写真付きの身分証である在留カードの提示を求めることによって、「なりすまし」を防ぐことを目的としています。
特定技能ビザ1号が終了すると、在留カードの記載でそのことは明らかになりますので、以後は他人になりすますこともできず、病院にかかりにくくなります。もちろん、自費で診療を受けることは可能ですが、不法残留がしづらくなるでしょう。
さらには、不法残留者は出入国在留管理局によって容易に把握されますから、その外国人労働者を招聘した受入会社が以後、他の外国人労働者を招聘しようとしても特定技能ビザが許可されないなどのペナルティが課されるでしょう。
日本語学校は留学生が卒業後に不法残留者になることは(留学ビザが今後許可されなくなるという意味で)死活問題なので、卒業した留学生を空港まで見送りに行き、帰国を目で確認することを行なっています。同じような光景が、制度開始から5年経過後には特定技能ビザの受入企業においてもみられるようになるでしょう。
技能実習の場合、失踪者の数や受入人数に占める失踪者の割合などが数値化され、不適格とされた受入企業は技能実習生を受け入れることができません。
特に「受入企業の責めによるべき失踪」は大きなマイナスポイントとなります。「受入企業の責めによるべき失踪」とは、技能実習生の失踪の原因が企業側にあることを言います。
例えば、劣悪な環境で長時間奴隷のように仕事をさせたり、給料を支払わなかったりすることが原因で、技能実習生が失踪(逃げ出)してしまうケースです。
同じように、受入企業に原因があって外国人労働者が失踪してしまった場合、その受入企業が以後、他の労働者を招聘しようとしても特定技能ビザは許可されなくなる可能性が高いです。
特定技能ビザ2号の人には、永住者となる道が開けているとのことですが、具体的にはどのような要件をみたすと永住者になれますか?
多くの要件は他の就労ビザの人と同じだけど、滞在年数については注意が必要だよ。
【解説】
日本の永住者になるための条件については「永住許可に関するガイドライン」が定められていて、直近では2017年4月に改定されており、特定技能ビザの創設に併せて、2019年にも改定が予定されています。
永住者となるための要件
A 素行が善良であること
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
B 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
C その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税義務等公的義務を履行していること。
ウ 現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
2019年のガイドライン改定では、特定技能ビザ1号は、上記Cアの要件の「就労資格」とは認めないこととされる予定です。
そうすると、例えば技能実習で5年滞在した人が特定技能ビザに移行しさらに5年在留したとしてもその時点では永住は許可されず、さらに特定技能ビザ2号で5年以上日本に滞在してはじめて永住の資格を満たすこととなります。
>>業界別!在留資格「特定技能ビザ」の活用方法を、建設、宿泊、外食、農業の業種別に検討してみた
この記事では、特定技能ビザが許可される14業種を4つにグルーピングし、建設業、宿泊業、外食産業、農業における在留資格「特定技能」の活用方法について業界ごとに詳しく考察しています。
①介護 >>「介護 特定技能」
②外食業 >>「外食業 特定技能」
③建設業 >>「建設業 特定技能」
④宿泊業 >>「宿泊業 特定技能」
⑤ビルクリーニング >>「ビルクリーニング 特定技能」
⑥農業 >>「農業 特定技能」
⑦飲食料品製造業 >>「飲食料品製造業 特定技能」
⑧素形材産業 >>「素形材産業 特定技能」
⑨造船・舶用工業 >>「造船・舶用工業 特定技能」
⑩漁業 >>「漁業 特定技能」
⑪自動車整備業 >>「自動車整備業 特定技能」
⑫産業機械製造業 >>「産業機械製造業 特定技能」
⑬電気電子情報関連産業 >>「電気電子情報関連産業 特定技能」
⑭航空業 >>「航空業 特定技能」
2020年7月現在、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置 として、多くの国が日本の上陸拒否対象国となっています。この指定がなされている間も「在留資格認定証明書交付申請」自体はすることができますが、その在留資格認定証明書の交付は上陸拒否対象国の指定が解除されるまでは見合されるものとされています。
〇最新の上陸拒否対象国に関する情報
・外務省ホームページ~新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について
招聘したい外国人労働者が特定技能ビザを取得できるように、特定技能ビザの要件をよく確認します。
特に外国人と結ぶ雇用契約書は入管法上「特定技能雇用契約」と呼ばれ、盛り込まなければならない事項が法定されています。
入管法だけでなく、外国人労働者にも日本人と同じ労働法が適用されますので、労働法違反の雇用契約書になっていないかについても目を配りましょう。
日本の受入会社が、行政書士を利用するなどして日本の入国管理局に対して在留資格認定証明書の交付の申請をします。無事に許可されると「在留資格認定証明書」を取得することができます。
在留資格認定証明書を受け取ったら、招聘人である受入会社はその原本を海外にいる外国人労働者に郵送します。
在留資格認定証明書の有効期限は3か月で、紛失すると再発行がききませんので、その2点はしっかりと頭に入れておきましょう。
原本を送る必要があります。スキャンをメールで送るだけでは足りません。
郵送の方法は、基本的にはEMSで良いと思いますが、国によってはEMSよりもFedexなど民間企業のサービスで送ったほうが良い場合もありますから、
外国人にどの手段で送ってほしいか確認してみましょう。過去に海外への出稼ぎ経験のある外国人労働者なら、その国に特有の事情について教えてくれます。
日本の場合は官のサービスに信頼感がありますが、国によっては官のシステムが腐りきっており、世界にネットワークを持つ多国籍企業のサービスの方がはるかに高品質ということがあります。
郵送に関してはトラブルが起こりがちです。
・ヨーロッパに送ったEMSが、クリスマスシーズンの膨大な郵便物に埋もれてしまい延着した
・EMSで送った在留資格認定証明書が、相手国の空港に到着したところまでは分かっているが、そこから先、行方不明になってしまった(最終的には発見された)
・民間サービスで送った在留資格認定証明書が直行便ではなく、第三国を経由して輸送され、第三国で封があけられていた
等々、油断はなりません。
外国人は、無事に在留資格認定証明書を受領したら、受領した在留資格認定証明書や顔写真などの書類をそろえて、母国にある日本大使館(又は指定された代理申請機関)に査証(ビザ)の申請をします。
通常は5営業日程度で許可・不許可の結果が出ます。許可されると、パスポートにステッカー上の査証を貼ってもらえます。
外国人が母国にいない場合は、滞在国で査証を申請できるのかのチェックが必要になります。
外国人は査証の貼られた有効なパスポートをもって、日本の空港に降り立ちます。そこで最終的に、日本への入国(正確には上陸)の許否が判断されます。
この上陸の許否の判断をするのが空港にいる入国審査官で、普通はこの段階で上陸拒否になることはあまりないですが、
見落とされていた犯罪歴がこの時点で判明したりすると上陸はできず、乗ってきた飛行機の折り返し便などで母国にとんぼ返りすることになります。
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。
>>業界別!在留資格「特定技能ビザ」の活用方法を、建設、宿泊、外食、農業の業種別に検討してみた
この記事では、特定技能ビザが許可される14業種を4つにグルーピングし、建設業、宿泊業、外食産業、農業における在留資格「特定技能」の活用方法について業界ごとに詳しく考察しています。
①介護 >>「介護 特定技能」
②外食業 >>「外食業 特定技能」
③建設業 >>「建設業 特定技能」
④宿泊業 >>「宿泊業 特定技能」
⑤ビルクリーニング >>「ビルクリーニング 特定技能」
⑥農業 >>「農業 特定技能」
⑦飲食料品製造業 >>「飲食料品製造業 特定技能」
⑧素形材産業 >>「素形材産業 特定技能」
⑨造船・舶用工業 >>「造船・舶用工業 特定技能」
⑩漁業 >>「漁業 特定技能」
⑪自動車整備業 >>「自動車整備業 特定技能」
⑫産業機械製造業 >>「産業機械製造業 特定技能」
⑬電気電子情報関連産業 >>「電気電子情報関連産業 特定技能」
⑭航空業 >>「航空業 特定技能」
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