外食産業における在留資格【特定技能ビザ】の活用方法

行政書士 佐久間毅

在留資格 特定技能

1.総説

 

2019年4月から、入管法が改正され人手不足が深刻な外食産業においても外国人の就労が解禁されました。これまでも多くの留学生が週28時間の制限の下に外食産業で働いてきたところですが、アルバイトではなく、フルタイムの雇用が可能になります。それを可能にするのが、あたらしい在留資格「特定技能1号」です。

 

在留資格「特定技能1号」は、日本での就労目的の滞在が通算5年に限定されています。したがって他の就労ビザのように、外国人を長期にわたって例えば定年まで雇用するようなことはできません。

もし今後、外食産業が在留資格「特定技能2号」の対象になれば、2号は滞在に期限がありませんから、同じ外国人を長期にわたり雇用することができるようになりますが、現在のところ2号の対象は建設業と造船業の二業種にとどまる予定で、外食産業は含まれていません。

 

また外食産業は2018年11月にようやく「医療・福祉施設給食製造」職種における技能実習制度が始まったばかりであるため、給食製造分野以外の一般的な外食産業の方々は、他の業種のように技能実習との使い分けを考えることなく、特定技能1号をどのように活用するのかをもっぱら検討していくこととなります。

在留資格 特定技能
©アルファサポート行政書士事務所作成、無断利用、転載を禁ずる

2.大規模な飲食チェーンにおける特定技能ビザの活用方法

 

大規模な飲食チェーンの場合、国内の留学生のアルバイト組を卒業後にフルタイム雇用に切り替えることに加えて、海外からの直接大量採用も選択肢として検討されています。すでにアルファサポート行政書士事務所にも、いくつかの飲食チェーン様からご依頼についてのご相談があります。海外からの招聘は国内アルバイト組からの切り替えよりもハードルが高くなりますが、これは日本語能力テストが含まれる特定技能試験の合格者でなければ特定技能1号で採用することができないからです。日本語ができる人を探すか、又は自社で日本語を教育するなどして試験に合格させてから招聘することとなります。

 

特定技能1号では、5年の雇用期間が満了すると、その外国人を引き続き雇用する手段はありませんので、帰国していただくこととなります。そこで図2のように、1期生を受け入れた翌年に2期生を受け入れることで、途切れることなく外国人従業員を補充することが各企業内で検討されています。

 

在留資格 特定技能
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3.小規模な飲食店における特定技能ビザの活用方法

 

小規模な飲食店の場合、海外から外国人従業員を招聘することはあまり現実的ではないかもしれません。しかしながら、すでにアルバイトとして働いてくれている外国人留学生を特定技能1号でフルタイム雇用に切り替えることは今後多くみられるようになり、アルファサポート行政書士事務所にもすでにご依頼について問い合わせを頂戴しています。留学ビザから特定技能1号ビザへの変更は、日本語能力の確認を含む特定技能試験に合格しなければ許されませんが、留学生であればN4レベルの日本語能力はすでに有していることが多く、企業の負担は少ないでしょう。

 

在留資格 特定技能
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特定技能1号ビザは通算5年を超えて雇用することができませんので、大規模な飲食チェーンのように1期生、2期生という大量採用は行わないとしても、Aさんを雇用した翌年にBさんを雇用するというように個人単位で採用の時期をずらすことが検討されています。

 

在留資格 特定技能
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4 特定活動ビザ申請における外食産業の特殊性

 

外食産業は他の業種に比べて法人化率が低い傾向にあります。大規模な飲食店チェーンであれば法人化されていますが、個人事業主の飲食店も多数あります。特定技能に限らず、就労ビザの申請は、大規模な法人であればあるほど申請に有利であることを念頭に行動する必要があります。個人事業主よりも中小企業の方が、そして中小企業よりも大企業の方が、特定技能ビザが許可されやすいので、中小零細企業や個人事業主が申請をする場合には、慎重には慎重を重ねる必要があります。ビザ申請を専門とする行政書士を活用しましょう。

 

5 外食産業分野における特定技能ビザの運用方針のポイント

 

以下では、2018年12月25日に閣議決定された「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」のポイントを解説します。※その後、一部を最新の情報にアップデートしました。

 

5-1  外食産業における受入上限人数について

外食業分野における特定技能ビザによる外国人就労者の受け入れ見込みは最大5万3千人で、これが上限となります。

政府の試算では、外食業分野では向こう5年間で29万人の人手不足が生じるため、5万人程度の受け入れでは焼け石に水との指摘もあり、事業者間で限られた外国人枠の奪い合いになる可能性が高いです。早めの着手が必要でしょう。

 

5-2  在留資格「特定技能1号」を取得できる外食業における外国人の基準について

特定技能1号の在留資格を取得できる可能性がある者は、以下の試験の合格者又は外食業分野の第2号技能実習を終了した者

(1)技能試験  「外食業技能測定試験(仮称)」※2019年4月より日本国内とベトナムにて実施予定(2019年1月25日現在)

(2)日本語試験 「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」

 

【コメント】

注目すべきは、「外食業分野の第2号技能実習を修了した者」との記載がなされている点です。2018年末時点では、外食業分野は「医療・福祉施設給食製造」分野のみが技能実習の対象であるにすぎませんが、2019年4月以降、技能実習制度が外食産業全般に拡大される可能性もあるでしょう。

 

技能試験は、国外のみならず、国内でも全国10か所程度で行われる予定です。2019年4月の制度運用開始直後は、まず国外ではベトナムにおいて、国内では東京と大阪で行われる予定になっていますが、徐々に拡大されていくでしょう。

 

外食業技能測定試験の試験内容は、食品衛生に配慮した飲食物の取り扱い、調理及び給仕に至る一連の業務を担い、管理することができる知識・技能を確認するものとなります。そのための試験科目は「衛生管理」「飲食物調理」「接客全般」であり、これらについての知識、判断能力、計画立案能力(簡単な計算能力を含む)を測定する筆記試験となります。すべての科目を受験することが必要ですが、受験者の選択により、配点に傾斜配分を受けることも可能です。

 

日本語能力試験はN5からN1までの5段階評価で、N4は下から2番目のレベルです。「基本的な日本語を理解することができる」レベルで、「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」レベルを指します。日本語学校に通っている留学生などであれば比較的簡単にクリアできるでしょう。

  

5-3  在留資格「特定技能1号」を取得した外国人がすることができる業務

外食業全般の仕事をすることができます。調理接客店舗管理すべてが対象とされています。

これまで、「調理」は技能ビザ、「店舗管理」は技術・人文知識・国際業務ビザ又は経営管理ビザを取得した外国人しか行なうことができませんでしたが、熟練した技能が無く、学歴が無い外国人でも、上記の試験に合格した者であればこれらの職に就くことができます。

 

接客」の仕事で就労ビザを取得することはこれまでの制度では不可能でしたが、2019年4月以降は在留資格「特定技能1号」の取得が可能になります。なお、風俗営業法上の「接待」の業務は行うことができません。

 

5-4  特定技能1号をもつ外国人を雇用する会社に求められる条件

全産業に共通の条件の他、外食業の会社(特定技能所属機関)に特に求められる主たる条件は以下のとおりです。

なお、全産業に共通の条件については在留資格「特定技能」総論をご参照ください。

 

1 食品産業特定技能協議会(仮称)の構成員となること

2 風俗営業法上の接待飲食等営業を営む営業所で就労させないこと

3 風俗営業法上の「接待」を行なわせないこと

 

5-5   特定技能1号をもつ外国人を雇用する形態

フルタイムの直接雇用に限られ、派遣会社からの派遣は受け入れできません。

 

6 外食業における特定技能ビザの技能試験

2019年4月より、日本国内とベトナムにおいて実施の予定です(2019年1月25日現在)。 

 

6-1 外食業技能測定試験がいよいよ開始されます!

(1)国内試験

・実施日程 2019年4月25日(木)

・開催地域 東京、大阪

・受験受付開始 3月下旬

・合格発表   5月中

 

(2)国外試験

・実施日程 調整中

・開催地域 ベトナム国ハノイ

 

(3)試験実施機関

・一般社団法人外国人食品産業技能評価機構

 

6-2 外食産業技能測定試験学習用テキスト(一般社団法人日本フードサービス著)

ダウンロード
外食業技能測定試験テキスト【衛生管理】
一般社団法人日本フードサービス協会作成。少なくとも初回の試験の問題は、このテキストの範囲から出題されるとのことです。
外食業技能測定試験_衛生管理.pdf
PDFファイル 831.8 KB
ダウンロード
外食業技能測定試験テキスト【飲食物調理】
一般社団法人日本フードサービス協会作成。少なくとも初回の試験の問題は、このテキストの範囲から出題されるとのことです。
外食業技能測定試験_飲食物調理.pdf
PDFファイル 1.1 MB
ダウンロード
外食業技能測定試験テキスト【接客全般】
一般社団法人日本フードサービス協会作成。少なくとも初回の試験の問題は、このテキストの範囲から出題されるとのことです。
外食業技能測定試験_接客全般.pdf
PDFファイル 637.8 KB

■この記事を書いた人

行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)

東京都出身。慶應義塾志木高等学校慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。


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