もう迷わない!特定技能試験【宿泊・外食・介護】は、どれを受験するのが賢い選択?

行政書士 佐久間毅

特定技能評価試験

0.はじめに

特定技能試験
雇用主

2019年4月からはじまった特定技能ビザのための試験が「特定技能評価試験」ですね?


特定技能試験
ひよこ先生

そうそう。特定技能ビザは、「即戦力」を求めているから、働く業界の知識を身につけている必要があるんだ。仕事に必要な知識を確認し評価するための試験が「特定技能評価試験」だね。


特定技能試験

 

【解説】

 

2019年4月に新しく創設された新しい就労ビザが「特定技能ビザ」です。特定技能ビザを申請するためには、事前に、日本語能力試験と、特定技能試験に合格しなければなりません。そして、特定技能試験は、産業ごとに行われます。ホテルで仕事をするのに必要な知識と、介護の仕事に必要な知識はまったく異なるからです。

 

 

特定技能ビザは14の産業が対象ですが、2019年8月の時点で特定技能評価試験が実施されたのは、宿泊(ホテル・旅館など)、外食(レストラン、飲食店)、介護の3つの産業のみです。これら3つの産業は、技能実習ビザの対象でないか、対象であっても修了者がほとんどいない状況のため、技能実習修了者の確保をあてにできないことから、業界の動きが速いのです。

 

国内にいらっしゃる留学生などの皆さんは、宿泊、外食、介護の特定技能試験うち、どれを受験すべきか迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

また、そもそも特定技能ビザが自分にとってよい選択肢なのかを知りたい方もいらっしゃるでしょう。

 

最終的にはご自身の興味ある道に進まれるのが一番ですが、その選択にどのようなメリットとデメリットがあるのか、事前にきちんと理解しておきたいものです。

 

この記事では、2019年8月時点ですでに特定技能試験が実施された宿泊、外食、介護の3つの産業に絞って、どれを受験するのが賢い選択なのかを探っていきます。

 

1 業界ごとの【特定技能試験】の比較

特定技能試験
雇用主

介護の特定技能試験は日本では行われていませんよね。留学生にとっては不便なんですがなぜなんでしょうか?


特定技能試験
ひよこ先生

海外から新たな人材を招へいすることに業界として力点を置いているんだろうね。国内で留学生のアルバイト先として近所のレストランやホテルはメジャーだけど、介護の現場は決してそうではないから、そういう国内人材の活用の可能性も影響しているね。


 

【解説】

 

2019年8月現在、介護の特定技能試験は国外のみで行われており、日本では行われていません。一方、宿泊と外食の特定技能試験は、日本でのみ行われています。この違いは、すでに多くの外国人材がアルバイトで働いている業種とそうでない業種との相違が反映しています。

 

レストランや料理店、ホテルや旅館ではこれまでも多くの学生が資格外活動許可を得て働いており、それらの学生を卒業後を継続して採用するためには、国内での特定技能試験の開催が望まれていました。いっぽうで、日本に住む外国人材のアルバイト先として介護業界はメジャーでないため、介護の特定技能試験は海外で行われ、海外での人材発掘に力点があります。

 

しかし今後は、宿泊や外食の特定技能試験も海外で行われ、介護の特定技能試験も日本で行われるでしょう。要はどこから始めるかという優先順位が業界ごとに異なったわけですが、時間が経過するにつれて体制が整い、日本と国外の両方で特定技能試験が行われるようになるでしょう。

 

特定技能試験

特定技能試験の切り口【1】:日本での受験 ※2019年8月現在

日本国内で実施された特定技能試験は宿泊、外食の2産業のみです。介護特定技能試験の国内での実施予定は当面ありません。

 

「宿泊」特定技能試験は1回開催されたのみで、2回目以降の予定の公表がありません(2019年8月4日現在)。

 

「外食」特定技能試験は、すでに第5回までの国内の予定が公表されています(第3回は9月、第4回は10月、第5回は2020年2月)。第4回と第5回は3000名の受験者を見込んでおり、大きな試験になる予定です。

 

特定技能試験の切り口【2】:海外での受験 ※2019年8月現在

「介護」特定技能試験は海外でのみ特定技能試験を行っています。これまでにフィリピンで行ったほか、2019年中にミャンマー、カンボジア、ネパール、モンゴルで行われます。

 

「外食」特定技能試験は2019年11月以降にフィリピンで、2020年1月以降にミャンマーで行われる予定です。

 

「宿泊」特定技能試験は予定の公表がありません。

 

特定技能試験の切り口【3】:試験の頻度 ※2019年8月現在

「介護」、「外食」ともに複数回の特定技能試験が年内に実施されますが、「宿泊」は予定が公表されていません。

 

特定技能試験の切り口【4】:試験の難度(合格率) ※2019年8月現在

第1回の特定技能試験は「介護」「外食」「宿泊」ともに70%を超えていますが、フィリピンで実施された第3・4回の介護特定技能試験は合格率が38%で難化しています。

合格率については、今後も推移をみまもる必要があります。7割合格する試験と3割しか合格できない試験とでは、受験準備に必要な時間が変わってくるからです。

 

特定技能試験の切り口【5】:永住の可能性

「介護」「宿泊」「外食」ともに特定技能1号のみが設けられているため、通算5年しか働くことができません。しかしながら介護業界には在留資格「介護」が用意されているため、要件を満たせば、在留資格「特定技能」から在留資格「介護」に変更して、期間制限なく働くことに道が開かれています。ただし在留資格「介護」を取得するためには、介護福祉士の国家試験に合格する必要があります。

 

特定技能試験の切り口【6】:自国でのキャリア

「介護」は、高齢化が深刻な日本では重要な産業ですが、留学生の母国である多くの国では高齢化社会になるまでに40年から50年かかります。自国の人口ピラミッドを調べてみましょう。フィリピンの人口ピラミッドをみると、高齢化は70年後くらいの話でしょう。そうすると、日本で身につけた介護の技能は、日本では重宝されますが、母国で活かすことはしばらく難しそうです。介護特定技能試験を受験される方は、就職後もコツコツ勉強を続けて「介護福祉士」の国家試験に合格し、スキルを日本で活かすことをお勧めします。

 

特定技能試験
日本の人口ピラミッド
特定技能試験
ベトナムの人口ピラミッド
特定技能試験
フィリピンの人口ピラミッド
特定技能試験
ネパールの人口ピラミッド
特定技能試験
世界の人口ピラミッド

特定技能試験の切り口【7】:世界でのキャリア

「介護」の需要があるのは、高齢化が進む先進国です。一方、「宿泊」や「外食」の産業は、世界中のどの都市にも存在しますから、世界の他の国で働くことも可能でしょう。もし日本にあるアメリカ系やフランス系といった外資系ホテルに就職することができたら、世界中にある同系列のホテルに就職できる可能性は高まるでしょう。

 

2 特定技能ビザは、誰にとって魅力的な在留資格か?

2-1 大学生・大学院生と特定技能試験

特定技能試験
雇用主

私は大学生なのですが、そもそも特定技能ビザはよい選択肢でしょうか?


特定技能試験
ひよこ先生

せかっかく大学に通っているんだからきちんと卒業して、通常の就労ビザを考えたらどうかな? どうしても従来の就労ビザを取得できない時に、セカンドベストとして特定技能ビザを取得することをお勧めするよ!


 

【解説】

 

特定技能ビザは、学歴を問いません。また、日本語能力もN4で大丈夫です。これは従来の就労ビザから考えると大幅にハードルが下がっています。これならあなたも比較的ラクに特定技能ビザを取得できそうですよね。しかしながら、特定技能ビザは取得が簡単ですが、通算で5年間しか日本で働くことができません。5年働くとそれ以上ビザの更新はできないので、自国に帰ることとなります。

 

もしあなたが、大学生なのであれば、まずはきちんと卒業して、「技術・人文知識・国際業務」や「教授」などの専門職向けのビザ取得を目指すことをお勧めします。これらのビザであれば、期間に制限はないので10年でも20年でも日本で働くことができますし、その途中で永住権も取得できるでしょう。

 

また2019年6月からは、日本の大学や大学院の卒業者は、日本語能力試験でN1に合格すれば、専門職としての仕事を主としながらも、従として単純労働が含まれている職種でも特定活動ビザ(特定技能と名前が似ていますが別ものです。)で就労ができるようになりました。これまでは専門職のビザを取得したら、専門職としての仕事以外は一切してはいけなかったのですが、この特定活動ビザを取得すれば仕事に単純労働が混じっていても不法就労にはなりません。この特定活動ビザは、特定技能ビザのように14業種に限定されていないので、風俗営業を除くあらゆる業種で働くことができます。

 

もしあなたが大学院を修了し、かつ、高収入の仕事につけたなら、学歴、職歴、年収、研究実績などの項目をポイント計算し、70点以上を獲得すれば取得できる「高度専門職ビザ」に近づきます。

 

大学や大学院に通う留学生は、まずはこれらの就労ビザの獲得を目指し、難しいようであれば特定技能ビザを目指すのが良いでしょう。もちろん、万が一専門職として就職できなかったときの保険としてあらかじめ特定技能試験に受験し合格しておくことはとても良い判断と思います。

 

2-2 専門学校生と特定技能試験

特定技能試験
雇用主

専門学校生の場合は、特定技能ビザをどのように考えるべきですか?


特定技能試験
ひよこ先生

専門学校生の場合は、従来の就労ビザと同様に、特定技能ビザも積極的に検討すると良いよ。


 

【解説】

 

日本の専門学校生は、以前は日本の就労ビザの申請資格がありませんでした。今は、専門学校生も技術・人文知識・国際業務のビザを申請することができますが、専門学校で学んだことと、仕事の内容に「強い関連性」がなければ許可されません。「強い関連性」なので、通常程度に関連性があるだけでは、許可されないのです。

 

過去、専門学校生が技術・人文知識・国際業務のビザを申請しても、「強い関連性」がないので不許可になる事例が多くありました。しかしながら、特定技能ビザであれば学歴が問われないので、特定技能試験と日本語能力試験に合格すれば、許可される可能性が高いでしょう。

 

ただし気を付けていただきたいのは、学校の出席率です。学歴は問われませんが、出席率は問われます。留学ビザから特定技能ビザに変更する場合は、在留資格変更許可申請をしますが、この申請をする場合には、これまでの日本における在留状況が審査対象となるからです。学校の出席率が悪いから留学ビザの更新ができそうもないという状況で特定技能ビザを申請しても許可されるのは難しいです。

 

2-3 日本語学校生と特定技能試験

特定技能試験
雇用主

日本語学校生の場合は、特定技能ビザをどのように考えたらよいでしょうか?


特定技能試験
ひよこ先生

日本語学校生で、母国で大学に行っておらず、かつ、日本の大学に進学する予定のない人にとっては、特定技能ビザはかなり良い選択肢になるよ。


 

【解説】

 

日本の就労ビザの典型である技術・人文知識・国際業務ビザの取得要件は、要件が細かく分かれています。

 

まず、「人文知識」領域でビザを取得するためには、大学又は日本の専門学校において関連科目を専攻して卒業しているか実務経験が10年以上必要です。よって日本語学校卒業で大卒でなくても実務経験10年以上を証明できれば取得の可能性はありますが、実際にはハードルが高いでしょう。

 

また「国際業務」領域でビザを取得するためには、原則として3年以上の実務経験が必要とされ、大卒者が語学関連の仕事を付くときには実務経験が免除されます。つまり、大卒者でなければ必ず3年以上の実務経験が必要です。

 

上記から、大卒者が語学関連の業務に就くことが最も技術・人文知識・国際業務のビザを取得しやすく、次に取得しやすいのが大卒者が専攻と関連する仕事に就く場合と言えます。要するに、技術・人文知識・国際業務のビザは、大卒者が取得しやすいように制度設計されているのです。

 

このため、日本の大学に進学しない日本語学校の留学生は、卒業すると母国に帰国されることが大半でしたが、2019年4月に創設された特定技能ビザによって、合法的に日本で就労することができます。

 

2-4 ワーキングホリデービザ滞在者と特定技能試験

特定技能試験
雇用主

ワーキングホリデー滞在者にとって特定技能ビザはどのようなものですか?


特定技能試験
ひよこ先生

ワーキングホリデー滞在者と特定技能試験はかなり相性が良いよ。積極的に特定技能試験にチャレンジすることをお勧めするよ。


 

【解説】

 

ワーキングホリデー滞在者と特定技能ビザは相性が良いと考えています。ワーキングホリデーは6か月又は1年限りの滞在が許可され、更新はありません。もともと短期の滞在を前提に来日されている方が多く、その間、日本の飲食店や地方の民宿などで働いている方も多くいらっしゃいます。

 

ワーキングホリデーの目的は、「日本文化と日本の生活様式を理解するために、日本で休暇を過ごすこと」です。休暇を過ごすることが主目的ですから学歴は問われず、実際、大卒でない方も多くいます。

 

このようなワーキングホリデー滞在者が1年又は6か月の日本滞在で日本を気に入って、日本に住みつづけたいと考えてもなかなか難しい事情がありました。なぜなら、就労ビザを取得するには大卒者が有利ですし、仮に大卒者であってもワーキングホリデー滞在中のアルバイト先での職種が就労ビザの要件を満たさないものが大半であるからです。

 

しかしながら、特定技能ビザができてからは、ワーキングホリデー滞在中にしていたレストランやホテルでの仕事を、そのまま継続することに道が開かれました(もちろん、特定技能ビザの様々な要件をクリアする必要がありますが)。

 

ワーキングホリデー滞在者は、もともと1年や半年の予定で来日していますから、それが5年延びるだけで、とても「長い」と感じる傾向にあります。留学生にとっては日本で通算5年働くことが「短い」と感じられることと真逆の現象が起きています。その意味でも、ワーキングホリデー滞在者にとっては、特定技能試験が魅力的な選択肢になりえるでしょう。

 

■この記事を書いた人

行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)

東京都出身。慶應義塾志木高等学校慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。



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