更新:2021年2月3日
行政書士 佐久間毅
日本人とご結婚されたアメリカ人のお相手による日本の配偶者ビザの申請方法の2つ目は、
夫婦がともにアメリカなど海外で暮していたが同時に日本への移住することを希望していて、しかも入国時に短期ビザではなく配偶者ビザを取得するという方法です。
※夫婦で同時に日本へ入国する際に、アメリカ人配偶者が短期ビザで入国し、その後日本で配偶者ビザへの変更をするケースについては、別記事をご用意しています。
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・ アメリカ人による配偶者ビザ申請⑤:短期の在留資格から変更するケース
配偶者ビザでの入国を希望される場合、みなさま誰が入管に申請をするのかといった技術的なことに目が行きがちです。しかしこの申請の難しさはそこにはありません。それよりも、配偶者ビザの要件の立証に困難が生じがちであることを真に理解しましょう。
このケースでは、本来日本でお相手を呼び寄せる段取りをされる日本人配偶者が海外にいらっしゃるため、配偶者ビザの要件のうち、世帯の収入にかんする立証が、他のルートを選ぶ方がたよりも困難になりがちです。
この申請方法のポイント
配偶者ビザの条件(⇒こちら)をまず確認していただいた上で、他の申請ルートに比べ下記の点を特にご注意ください。
1)ご夫婦で同時に日本に帰国される場合は、日本企業の現地法人で働いていた方と海外の現地企業に採用されていたかたとでは難度が天と地ほどに異なります。ただし海外の企業にお勤めでも、日本支社などがある場合は有利です。
2)日本企業からの出向など海外赴任をされていた場合には、帰国後もすぐに元の企業で働き始めることができるので、配偶者ビザの条件である「収入の継続性・安定性・額の3点」を立証するにあたって、大きな困難があるかたは少ないです。
3)海外の現地企業で働いていらっしゃったかたは、日本での就職が決まっていないか、仮に就職が決まっていたとしても就職したばかりなので、収入の継続性・安定性・額の立証は慎重に行う必要があります。
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海外からご夫婦で日本に帰国するファーストステップは、日本人がアメリカ人のお相手のために日本の出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付を申請するところからはじまります。
在留資格認定証明書とは、日本に上陸しようとするアメリカ人が、日本において行おうとする活動が上陸のための条件(在留資格該当性)に適合しているかについて法務大臣があらかじめ審査を行ない、この条件に適合していると認めるときに交付する証明書です。
親族が申請できますが、注意点も
入管法施行規則は、日本人配偶者等の在留資格認定証明書交付申請は、「本邦に居住する本人の親族」としています。
そして親族とは、民法で「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」とされています。よってその範囲の親族は、アメリカ人配偶者のために在留資格認定証明書交付申請をすることができますが、下記の注意点があります。
注意1: 行政書士がお手伝いするときも、親族のサポートが必要です
日本の出入国在留管理局にたいして在留資格認定証明書交付申請をすることができる日本人は「日本に実際に居住している申請人の親族」です。行政書士がお手伝いする場合であっても、このお手伝いしてくれる親族が日本にいなければ申請をすることはできません。
時折、日本人配偶者が住民票を日本に残しているから、実際にはその市区町村に長らく住んでいないのに申請できるとお考えのかたがいらっしゃいますが、そもそも住民票を日本に残していることが住民基本台帳法という法律上適法な期間であったのかをまず確認しましょう。また、住民登録をしているかたは課税証明書や納税証明書を取得できるので、所得の証明でツジツマが合わなくならないようにしましょう。
住民登録を日本に残しているので日本人配偶者の名義で申請しますが、長らく日本に住んでいないので日本に所得がないことを理解して欲しいといったチグハグな申請になりがちなので気を付けます。
注意2: 申請人の居住予定地と、親族の居住地は同じ入管の管轄内で
また法律や規則に明文があるわけではありませんが、この親族の居住地を管轄する入管と、申請人が日本で暮らすことになる居住地を管轄する入管が異なるときには、申請を受け付けてくれないことが多いです。
例えば、日本人配偶者のご両親が申請をお手伝いしてくれる親族で、ご両親の居住地が東京で、申請人も関東地方に住む予定であれば東京入管に申請することができますが、ご両親の居住地が北海道で申請人が関東地方に住む予定であるときは申請の受付をしてくれないことがままあります。なぜなら、申請人は関東地方に居住するので本来は東京入管が審査すべきところ、北海道居住の申請代理人は札幌入管に申請する以外に道がなく、東京に暮らす予定のアメリカ人のお相手の審査を北海道の入管が行なうのは望ましいことではないからです。
実際に東京入管では、申請人が帰国後どの都道府県に居住する予定なのかを会社が発行する「辞令」などで疎明することを求められます。会社が東京本社勤務を命じたのであれば東京近郊に住むことを疎明できるというわけです。
注意3: 親族世帯の収入では、申請人世帯の収入をカバーできない
たとえば、日本人配偶者のお兄様が東京に住んでいて、申請に協力してくれることになったとしましょう。このお兄さんが公務員であるとか大企業であるで、十分な収入があるとします。しかしそのお兄さんと同居するわけでもなく、世帯は別になりますので、配偶者ビザの「世帯の収入」の審査に影響を与えないことは理解しておきましょう。
夫婦同時帰国の場合でご夫婦ともに就職先が見つかっていない場合で、安定した職業のお兄様が手伝ってくれるとしても、日本でお兄様の世帯と同居して生活費を出してもらうのではない以上、世帯の収入の立証の面であてにすることはできませんので、ご注意ください。
あくまでもご親族に手伝ってももらえるのは、ご夫婦が海外にいながらにして申請を完了できるというところまでです。
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申請後、東京出入国在留管理局の場合は2か月前後で結果がでます。
在留資格認定証明書が不許可になった場合は、翌日にでも再申請をすることができますが、不許可になった理由を解決しないと何度申請しても同じ結果を得ることになります。一度不許可になってしまうとその結果は法務大臣の名前で出されますので、その後、その結果をひっくり返すことは大変です。
また、一度不許可になってしまうと夫婦間の関係もギクシャクしがちですので、余計なトラブルを抱え込まないためにも、初回から油断をしないようにしましょう。
よくあるミスは、みんなに共通で求められる書面だけを漫然と集めて入国管理局に提出してしまうというものです。それでも、何も弱点がないカップルの場合はちゃんと許可が下りますが、収入の継続性、安定性、額のいずれかや、年齢差や対面での交際が短い場合などはあっけなく不許可にされますのでご注意ください。
最近はNHKなどで入管を取り上げたドキュメンタリーなどが放映されてだいぶ周知されているとは思いますが、入管はときに人権侵害ではと思われるような判断をやってのけるシビアな組織ですので、甘い期待は捨てたほうがよいです。
なお、日本で先に結婚をした場合には、アメリカ政府に結婚を届出る方法がありませんので、アメリカ政府発行の婚姻証明書を入手することはできません。
【申請先】出入国在留管理局 ※各都道府県に少なくとも本局、支局、出張所のいずれか1か所あります。
【必要書類】
(みんなに共通の書類)
・在留資格認定証明書交付申請書
・戸籍謄本
・アメリカの結婚証明書 ※アメリカ先行で結婚をした場合のみ。
・住民票
・課税証明書・納税証明書
・身元保証書
・質問書
(弱点をカバーする書類)
・弱点にあわせて適宜
【許可条件】
・婚姻の真実性が立証されること
・収入の継続性・安定性・額に問題がないことが立証されること
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在留資格認定証明書が無事に交付されたら、その在留資格認定証明書をEMSなどでアメリカに郵送します。
お相手のアメリカ人がそれを受け取ったら、その在留資格認定証明書をもちいて、お相手が日本の在外公館で査証申請をします。
査証とは、申請人であるアメリカ人の日本への入国と在留が、査証に記載された条件下において適当であることを、日本の在外公館の領事官等が当人のパスポート上に裏書した証明のことをいい、日本への入国推薦状の意味をもつもののことをいいます。
査証が発給されると、日本に入国するために必要不可欠な推薦状を手に入れたことになります。
査証の発給が拒否されたときには、同一目的の申請は、6か月後でなければすることができません。
査証申請手順1:在アメリカ日本国大使館と総領事館の「管轄」を調べる
まずは、アメリカ人の居住地に対応する日本国大使館、総領事館がどこなのかを判定します。管轄外のところへは申請できません。
〇参照:全米大使館・領事館リスト
査証申請手順2:書類をそろえる
査証申請に必要な書類を集めます。
査証の審査では、主としてお相手のアメリカ国内での犯罪歴が調査されます。
在留資格認定証明書がある場合の多くは査証も発給されますが、日本大使館や日本領事館が把握する犯罪歴などがあれば発給されないこともありますので、油断はしないでください。
【必要書類】
・査証申請書(写真貼付 2 "x 2"、背景は白、1枚)
・旅券
・在留資格認定証明書(原本)及びその写し
・その他指示されたもの
日本に上陸しようとするアメリカ人を含む外国人は、出入国港において、入国審査官による上陸審査をうけます。
上陸が認められるための条件はつぎの5つです。
① 有効な旅券及び日本国領事官等が発給した有効な査証を所持していること
② 申請に係る活動(我が国で行おうとする活動)が偽りのものでないこと
③ 我が国で行おうとする活動が,入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること
④ 滞在予定期間が,在留期間を定めた施行規則の規定に適合すること
⑤ 入管法第5条に定める上陸拒否事由に該当しないこと
許可された場合は、新千歳空港、成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港、広島空港、福岡空港においては、パスポートに上陸許可の証印がされるとともに、上陸許可により「日本人の配偶者等」の在留資格を取得した方は、空港で「在留カード」の交付を受けます。
〇よく一緒に読まれている記事
・ アメリカ人による配偶者ビザ申請①:アメリカから呼び寄せるケース
・ アメリカ人による配偶者ビザ申請②:夫婦ともにアメリカなど海外在住であるケース
・ アメリカ人による配偶者ビザ申請③:アメリカ人が日本で自ら申請し、出国して結果を待つケース
・ アメリカ人による配偶者ビザ申請④:中長期の在留資格から変更するケース
・ アメリカ人による配偶者ビザ申請⑤:短期の在留資格から変更するケース
・ アメリカ人による配偶者ビザ申請⑥:前婚の日本人と離婚して、別の日本人と結婚するケース
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
国際結婚と配偶者ビザ