更新:2021年2月4日
行政書士 佐久間毅
日本の配偶者ビザの申請方法の5つ目は、日本に短期滞在していたオーストラリア人の方が、日本人との結婚を契機に、日本にいながらにして配偶者ビザへと切り替える申請方法です。
一般のかたは、海外から新規に入国するオーストラリア人よりも、すでに日本へ入国しているオーストラリア人のほうが配偶者ビザをもらいやすいと考えがちですが、ビザのプロは逆にかんがえます。
なぜなら新規入国者よりも、ビザを変更するかたのほうが、審査される項目が多くなるからです。
以下、ご説明していきます。
この申請方法のポイント
配偶者ビザの条件(⇒こちら)をまず確認していただいた上で、他の申請ルートに比べ下記の点を特にご注意ください。
1)「やむを得ない特別の事情」が立証されないと配偶者ビザは許可されません
査証免除制度を利用して日本に入国されたオーストラリア人のお相手には、日本の空港で90日の短期滞在の在留資格が付与されています。
いっぽうで短期滞在から配偶者ビザへの変更申請は、「やむを得ない特別の事情」があるとき以外は不許可にすると入管法に書かれています。よって、よほどビザ申請に精通したプロのサポートがあるとき以外は、このルートをとることができません。
判例は、短期滞在から配偶者ビザへの変更は「在留資格認定証明書制度の潜脱である」としています。要するに、在留資格認定証明書交付申請をして、在外公館で中長期滞在者としての審査を受けてから来日してください、と国は考えています。
2)短期滞在での在留中に違法行為をしていないことが必要です
在留資格をAからBに変更するときには、これから取得する予定のBの在留資格該当性だけではなく、これまで持っていたAの在留資格で日本に滞在していたあいだ、日本の法令を遵守していたかが審査対象となります。そこでもし在留不良があったときには、たとえ配偶者ビザの要件を満たしていても、在留資格変更許可申請は不許可となります。
短期ビザの場合は短期間しか日本に在留していないのですから、その間に法律違反を犯していることは少ないと思いますが、まれに日本の空港で申述した入国目的とまるで異なる活動をされていることもありますので注意しましょう。
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短期の在留資格を日本で変更申請する場合には、日本人の結婚相手が申請代理人として申請することはありませんので、かならず申請人はかならずオーストラリア人ご自身となります。
しかしながら、必要書類のほとんどは日本人が収集し、作成することとなります。必要書類のひとつである「質問書」の作成名義もオーストラリア人配偶者ではなく、日本人であることにご留意ください。
短期の在留資格を配偶者ビザへ変更するファーストステップは、オーストラリア人のお相手が自分自身で日本の出入国在留管理局に在留資格変更許可申請をするところからはじまります。
中長期ビザからの変更の場合は在留カードとパスポートを提示して申請しますが、短期滞在者には在留カードが交付されないため、みずからの身分事項と在留資格を証明するためにパスポートを提示して申請します。
ただしこの申請ルートは、入管法という法律の条文に原則禁止と明記されている方法なのですから、ビザ専門の行政書士のサポートがないときは、申請が受付されない(申請書を受け取ってもらえない)ことが多く、また仮に受付されても許可されないことが多いのでその点はご了承ください。
この申請ルートの場合は、配偶者ビザの条件(⇒こちら)を満たしていることは当然のこととして、
①「やむを得ない特別の事情」が立証されること
②短期滞在中に日本の法律を守っていたこと(=素行の善良性)
の2点が許可の条件となります。
***
申請後、東京出入国在留管理局の場合は2か月前後で結果がでます。
在留資格変更許可申請が不許可になった場合は再申請をすることができますが、短期ビザの残りの在留期間を考えれば、出国して出直すことが多いでしょう。
不許可になった理由を解決しないと何度申請しても同じ結果を得ることになります。一度不許可になってしまうとその結果は法務大臣の名前で出されますので、その後、その結果をひっくり返すことは大変です。
また、一度不許可になってしまうと夫婦間の関係もギクシャクしがちですので、余計なトラブルを抱え込まないためにも、初回から油断をしないようにしましょう。
よくあるミスは、みんなに共通で求められる書面だけを漫然と集めて入国管理局に提出してしまうというものです。それでも、何も弱点がないカップルの場合はちゃんと許可が下りますが、収入の継続性、安定性、額のいずれかや、年齢差や対面での交際が短い場合などはあっけなく不許可にされますのでご注意ください。
最近はNHKなどで入管を取り上げたドキュメンタリーなどが放映されてだいぶ周知されているとは思いますが、入管はときに人権侵害ではと思われるような判断をやってのけるシビアな組織ですので、甘い期待は捨てたほうがよいです。
逆にいうと偽装婚がとても多く、入管が性善説で動くことを躊躇する現実的な事情もあるのですが。
なお、日本で先に結婚をした場合には、オーストラリア政府に結婚を届出る方法がありませんので、オーストラリア政府発行の婚姻証明書を入手することはできません。
【申請先】出入国在留管理局 ※各都道府県に少なくとも本局、支局、出張所のいずれか1か所あります。
【必要書類】
(みんなに共通の書類)
・在留資格認定証明書交付申請書
・戸籍謄本
・オーストラリアの結婚証明書 ※オーストラリア先行で結婚をした場合のみ。
・住民票
・課税証明書・納税証明書
・身元保証書
・質問書
(弱点をカバーする書類)
・弱点にあわせて適宜
【許可条件】
・婚姻の真実性が立証されること
・収入の継続性・安定性・額に問題がないことが立証されること
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在留資格変更許可申請が無事に許可されると、出入国在留管理局で新しい在留カードが交付されます。
この在留カードが在留資格「日本人の配偶者等」の所持者であることの証明となります。
残念ながら不許可になってしまった時は、残りの在留期間と相談して、帰国して出直すか、もう一度変更申請をチャレンジするか決めましょう。短期ビザなので、帰国して出直すケースが大半でしょう。
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・ オーストラリア人による配偶者ビザ申請②:夫婦ともにオーストラリアなど海外在住であるケース
・ オーストラリア人による配偶者ビザ申請③:オーストラリア人が日本で自ら申請し、出国して結果を待つケース
・ オーストラリア人による配偶者ビザ申請④:中長期の在留資格から変更するケース
・ オーストラリア人による配偶者ビザ申請⑤:短期の在留資格から変更するケース
・ オーストラリア人による配偶者ビザ申請⑥:前婚の日本人と離婚して、別の日本人と結婚するケース
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
国際結婚と配偶者ビザ