更新:2021年2月7日
行政書士 佐久間毅
日本人とご結婚されたフランス人による配偶者ビザの申請方法の6つ目は、申請の難度が大変に高く容易には許可されません。
日本人Aと結婚をしてその結婚を根拠に配偶者ビザを取得した外国人の方が、日本人Aと離婚して、許可されている在留期限内に別の日本人Bと結婚をしたケースにおいては、日本人Bとの結婚を根拠に配偶者ビザの在留期間の更新を申請することとなります。
この申請をするときには、通常の配偶者ビザの条件の立証に加えて、つぎのような点が厳重にチェックされます。
・前回の配偶者ビザの取得からどの程度の期間が経過しているか
・前回の配偶者ビザ申請に虚偽が含まれていないか
・前婚が実質的に破綻していたにも拘わらず、配偶者ビザの更新を過去にしていないか
以下、ご説明していきます。
この申請方法のポイント
配偶者ビザの条件(⇒こちら)をまず確認していただいた上で、他の申請ルートに比べ下記の点を特にご注意ください。
1)前回の配偶者ビザの取得からどの程度の期間が経過しているか
今おもちの在留資格が3年の在留期限なのであれば、前回の配偶者ビザ申請から2年以上経過していることもあるでしょう。このようなときは、うまく行っていた結婚が2年の間に不仲になって離婚することはありうることなので、大きな問題は生じないかもしれません。
しかしながら今おもちの在留資格が1年の在留期限であった場合、それが許可された時点では婚姻関係がうまくいっていたわけです(そうでなければ、1年の在留期限は許可されません。)。
1年前は前婚の配偶者Aとうまくいっていたのに、それが数か月後に破綻したというのはあり得ないことではありませんがあまりないことであり、加えて、その許可されている1年以内に次の伴侶をみつけるというのは第三者から見れば不自然なことが多いでしょう。
第三者である入管から見て不自然な点があれば配偶者ビザは許可されませんので、非常に難度があがります。
2)前回の配偶者ビザ申請に虚偽が含まれていないか
今おもちの在留資格が1年の在留期限であった場合、わずか1年前には前婚配偶者と仲良くやっているという申請を入管に対しおこなって配偶者ビザが許可されました。
そこからわずか数カ月のうちに離婚し、別の伴侶とご結婚されたわけですが、本当に前回の申請は真実のものであったでしょうか?
たとえば前回の配偶者ビザ申請のときに婚姻関係が破綻していたのであれば虚偽申請ですし、不倫関係にあった場合も同様です。
3)前婚が実質的に破綻していたにも拘わらず、配偶者ビザの更新を過去にしていないか
たまにあるのが、前婚がもう破綻していたにも拘わらず、そのことを隠して何事もないように配偶者ビザの更新をしていたケースです。
前婚が破綻するといっても決して憎み合ってのことではなく、前婚配偶者もお相手が今後も日本で暮らすことにやぶさかではない場合、婚姻関係が破綻しているのに更新申請に協力するケースがあります。このようなとき、今回計画しているパートナーチェンジの更新申請において、前回申請とツジツマのあわない申請内容となることが多いものです。
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パートナーチェンジをされたフランス人が在留資格「日本人の配偶者等」を更新申請する場合には、日本人の結婚相手が申請代理人として申請することはありませんので、かならず申請人はフランス人ご自身となります。
しかしながら、必要書類のほとんどは日本人が収集し、作成することとなります。必要書類のひとつである「質問書」の作成名義もフランス人配偶者ではなく、日本人であることにご留意ください。
配偶者ビザを更新するファーストステップは、フランス人のお相手が自分自身で日本の出入国在留管理局に在留期間更新許可申請をするところからはじまります。
ただしこの申請ルートは、仲の良かった夫婦関係が破綻して、別の日本人と結婚に至るまでのプロセスがわずかな在留期限内で行われることで、交際の経緯が第三者から見て極めて不自然なものとなりがちです。
この申請ルートの場合は、配偶者ビザの条件(⇒こちら)を満たしていることは当然のこととして、
・交際の経緯が不自然でなく立証されており、かつ、今回の申請は言うまでもなく前回の申請にも虚偽が無いこと
が許可の条件となります。
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申請後、東京出入国在留管理局の場合は2か月前後で結果がでます。
在留期間更新許可申請が不許可になった場合は再申請をすることができますが、残りの在留期間を考えれば、出国して出直すことも多いでしょう。
不許可になった理由を解決しないと何度申請しても同じ結果を得ることになります。一度不許可になってしまうとその結果は法務大臣の名前で出されますので、その後、その結果をひっくり返すことは大変です。
また、一度不許可になってしまうと夫婦間の関係もギクシャクしがちですので、余計なトラブルを抱え込まないためにも、初回から油断をしないようにしましょう。
よくあるミスは、みんなに共通で求められる書面だけを漫然と集めて入国管理局に提出してしまうというものです。それでも、何も弱点がないカップルの場合はちゃんと許可が下りますが、収入の継続性、安定性、額のいずれかや、年齢差や対面での交際が短い場合などはあっけなく不許可にされますのでご注意ください。
最近はNHKなどで入管を取り上げたドキュメンタリーなどが放映されてだいぶ周知されているとは思いますが、入管はときに人権侵害ではと思われるような判断をやってのけるシビアな組織ですので、甘い期待は捨てたほうがよいです。
逆にいうと偽装婚がとても多く、入管が性善説で動くことを躊躇する現実的な事情もあるのですが。
なお、フランス先行で結婚されたときはもちろんのこと、日本先行で結婚をされたときもフランス政府に結婚を登録することができますし、しなければなりません。
日本で結婚が完了したが、フランス政府にはまだ結婚を報告・登録していない状況は跛行婚(はこうこん)とよばれ、お相手はフランスでは独身の状態ですから、配偶者ビザは通常は許可されません。
【申請先】出入国在留管理局 ※各都道府県に少なくとも本局、支局、出張所のいずれか1か所あります。
【必要書類】
(みんなに共通の書類)
・在留資格認定証明書交付申請書
・戸籍謄本
・フランスの結婚証明書 ※フランス政府から発行されたもので、認証済みのもの。
・住民票
・課税証明書・納税証明書
・身元保証書
・質問書
(弱点をカバーする書類)
・弱点にあわせて適宜
【許可条件】
・婚姻の真実性が立証されること
・収入の継続性・安定性・額に問題がないことが立証されること
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在留期間更新許可申請が無事に許可されると、出入国在留管理局で新しい在留カードが交付されます。
この在留カードが在留資格「日本人の配偶者等」の所持者であることの証明となります。
残念ながら不許可になってしまった時は、残りの在留期間と相談して、帰国して出直すか、もう一度変更申請をチャレンジするか決めましょう。
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・ フランス人による配偶者ビザ申請②:夫婦ともに フランスなど海外在住であるケース
・ フランス人による配偶者ビザ申請③:フランス人が日本で自ら申請し、出国して結果を待つケース
・ フランス人による配偶者ビザ申請④:中長期の在留資格から変更するケース
・ フランス人による配偶者ビザ申請⑤:短期の在留資格から変更するケース
・ フランス人による配偶者ビザ申請⑥:前婚の日本人と離婚して、別の日本人と結婚するケース
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
国際結婚と配偶者ビザ