更新:2021年2月6日
行政書士 佐久間毅
台湾人のお相手による日本の配偶者ビザの申請方法の3つ目は、配偶者ビザを日本人が申請するのではなく、台湾人のお相手がみずから申請をするケースです。
法的に正確な表現をすると、すべての配偶者ビザは台湾人本人が申請をするものなのですが、申請先が日本の入国管理局であるため、多くは日本人が代理人として申請をしています。
ところが、あくまでも配偶者ビザは台湾人本人が申請人なので、台湾人のお相手がなんらかの事情で日本に滞在しているときには、もちろん台湾人ご本人も申請をすることができます。
申請人ご本人である台湾人がいま現在日本にいるのであれば、わざわざ帰国して結果を待つことなく、変更申請をして日本で結果を待てばよいのではと思われたあなた。
ビザ申請は奥が深いもので、現在お相手の台湾人が日本に滞在されている場合であっても、変更申請ができない場合や、すべきでないときがあるのです。
以下、ご説明していきます。
この申請方法のポイント
配偶者ビザの条件(⇒こちら)をまず確認していただいた上で、他の申請ルートに比べ下記の点を特にご注意ください。
1)在留資格変更申請では、通常の配偶者ビザの要件のほかに、「素行の善良性」や「やむを得ない特別の事情」の要件が求められます。そこでこれらの変更申請に特有の要件をクリアできない方は、一度帰国して結果を待つこととなります。
2)技能実習ビザをお持ちの台湾人が日本人と結婚された場合は、原則として変更申請はできませんので、日本で配偶者ビザの申請をしてから帰国して結果を待つかたが多くいらっしゃいます。
3)短期ビザで入国され日本に滞在されているかたで、15日、30日の在留期間の方は、制度上配偶者ビザへの変更申請はできません。30日以内に結果が出ることは通常なく、かつ、在留期間も延長されないからです。
〇よく一緒に読まれている記事
ご自身で日本で在留資格認定証明書交付申請をしてから結果を台湾で待つケースのファーストステップは、台湾人のお相手が自分自身で日本の出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付を申請するところからはじまります。
在留資格認定証明書とは、日本に上陸しようとする台湾人が、日本において行おうとする活動が上陸のための条件(在留資格該当性)に適合しているかについて法務大臣があらかじめ審査を行ない、この条件に適合していると認めるときに交付する証明書です。
多くのケースでは在留資格認定証明書交付申請は申請代理人として日本人が行なっていますが、その場合でもあくまでも申請人は台湾人ご自身ですので、もちろん申請代理人ではなく台湾人のご本人も申請が可能です。
どんなケースでこの申請ルートが選ばれるのか、以下みていきましょう。
ケース1:変更申請に求められる「素行の善良性」の立証が困難なとき
在留資格をAからBへ変更するときには、Bの在留資格該当性が審査されるだけではなく、Aの在留資格で適法に在留していたのかも審査項目となります。
たとえば、留学生で週28時間の法定アルバイト時間を超過して働いていた場合は資格外活動罪という犯罪ですし、技術・人文知識・国際業務の就労ビザで滞在しているのにレストランで調理の仕事をしていたりすれば不法就労罪です。
これらは犯罪ですので、「素行の善良性」の要件は立証することができなくなります。このようなときに一度帰国してゼロからやり直すと、もちろん過去の違法行為がすべてリセットされるわけではないにせよ、ビザ申請の専門家のサポートを得て申請をすれば、犯罪の軽重にもよりますが、許可を勝ち取れることもあります。
要するに、素行が善良であるとは言えないときに、変更申請で強行突破をはかることはどう考えても賢くないので、許可される可能性を少しでも高めるために帰国して結果を待つことがあるのです。
ケース2:短期ビザで滞在しているとき
短期ビザで日本に滞在されていても、15日や30日の在留期限が与えられているかたは、制度上、配偶者ビザへの変更申請をすることができません。
また90日の短期ビザで滞在されているかたも、入管法という法律で、「やむを得ない特別の事情」が立証されない限り変更申請が許可されることはありません。なぜなら、台湾における日本の在外公館に該たる日本台湾交流協会で取得した短期査証は、査証に記載された短期滞在の目的の範囲内でのみ入国の適性が審査されているにすぎず、日本人の配偶者等での滞在の適格者であるかどうかについて在外公館の審査を受けていないからです。
一般論として、短期ビザから配偶者ビザへの変更申請は「在留資格認定証明書制度の趣旨を潜脱させる(判例)」と考えられています。
よって入管の審査が厳しくなりますので、帰国して結果を待つかたも少なくないのです。
特に行政書士のサポートのないかたが「やむを得ない特別の事情」を立証していくことは困難なので、行政書士に依頼しないケースでは結果を台湾で待つ申請ルートが好まれることになります。
***
申請後、東京出入国在留管理局の場合は2か月前後で結果がでます。
在留資格認定証明書が不許可になった場合は、翌日にでも再申請をすることができますが、不許可になった理由を解決しないと何度申請しても同じ結果を得ることになります。一度不許可になってしまうとその結果は法務大臣の名前で出されますので、その後、その結果をひっくり返すことは大変です。
また、一度不許可になってしまうと夫婦間の関係もギクシャクしがちですので、余計なトラブルを抱え込まないためにも、初回から油断をしないようにしましょう。
よくあるミスは、みんなに共通で求められる書面だけを漫然と集めて入国管理局に提出してしまうというものです。それでも、何も弱点がないカップルの場合はちゃんと許可が下りますが、収入の継続性、安定性、額のいずれかや、年齢差や対面での交際が短い場合などはあっけなく不許可にされますのでご注意ください。
最近はNHKなどで入管を取り上げたドキュメンタリーなどが放映されてだいぶ周知されているとは思いますが、入管はときに人権侵害ではと思われるような判断をやってのけるシビアな組織ですので、甘い期待は捨てたほうがよいです。
なお、台湾先行で結婚されたときはもちろんのこと、日本先行で結婚をされたときも台湾政府に結婚を登録することができますし、しなければなりません。
日本で結婚が完了したが、台湾政府にはまだ結婚を報告・登録していない状況は跛行婚(はこうこん)とよばれ、お相手は台湾では独身の状態ですから、配偶者ビザは通常は許可されません。
【申請先】出入国在留管理局 ※各都道府県に少なくとも本局、支局、出張所のいずれか1か所あります。
【必要書類】
(みんなに共通の書類)
・在留資格認定証明書交付申請書
・戸籍謄本
・台湾の結婚証明書 ※台湾政府から発行されたもので、認証済みのもの。
・住民票
・課税証明書・納税証明書
・身元保証書
・質問書
(弱点をカバーする書類)
・弱点にあわせて適宜
【許可条件】
・婚姻の真実性が立証されること
・収入の継続性・安定性・額に問題がないことが立証されること
〇よく一緒に読まれている記事
在留資格認定証明書が無事に交付されたら、その在留資格認定証明書をEMSなどで台湾に郵送します。
お相手の台湾人がそれを受け取ったら、その在留資格認定証明書をもちいて、お相手が日本の在外公館で査証申請をします。
台湾の場合は、日本が台湾を正式に国家承認していないため、公益財団法人日本台湾交流協会が在外公館として機能しています。
査証とは、申請人である台湾人の日本への入国と在留が、査証に記載された条件下において適当であることを、日本の在外公館(日本台湾交流協会を含む。)の領事官等が当人のパスポート上に裏書した証明のことをいい、日本への入国推薦状の意味をもつもののことをいいます。
査証が発給されると、日本に入国するために必要不可欠な推薦状を手に入れたことになります。
査証の発給が拒否されたときには、同一目的の申請は、6か月後でなければすることができません。
査証申請手順1:日本台湾交流協会の事務所の「管轄」を調べる
まずは、日本台湾交流協会の台北事務所と高雄事務所の管轄を調べ、
台湾人のお相手の居住地に対応する事務所がどちらの事務所なのかを判定します。管轄外のところへは申請できません。
【管轄】台北、新北、基隆、桃園、新竹、苗栗、台中、彰化、宜蘭、花蓮、南投、金門、連江
【管轄】雲林、嘉義、台南、高雄、屏東、台東、澎湖
査証申請手順2:書類をそろえる
査証申請に必要な書類を集めます。
査証の審査では、主としてお相手の台湾内での犯罪歴が調査されるほか、相手国との外交的な考慮もなされます。
日本と相手国との外交上の信頼関係は査証免除国であるか否かに現れています。
在留資格認定証明書がある場合の大半は査証も発給されますが、日本大使館や日本領事館が把握する犯罪歴などがあれば発給されないこともありますので、入管への在留資格認定証明書交付申請ほどではないにせよ、慎重に申請しましょう。
査証が発給されなければ、日本に入国することはできません。
【必要書類】
・査証申請書(写真貼付 縦45cm × 横45cm 、背景は白、1枚)
・旅券
・在留資格認定証明書(原本)及びその写し
・その他指示されたもの
査証申請手順3:日本台湾交流協会で査証を申請する
・日本台湾交流協会に在留資格認定証明書を提示し、他の書面を提出して査証の審査を受けます。
日本に上陸しようとする台湾人を含む外国人は、出入国港において、入国審査官による上陸審査をうけます。
上陸が認められるための条件はつぎの5つです。
① 有効な旅券及び日本国領事官等が発給した有効な査証を所持していること
② 申請に係る活動(我が国で行おうとする活動)が偽りのものでないこと
③ 我が国で行おうとする活動が,入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること
④ 滞在予定期間が,在留期間を定めた施行規則の規定に適合すること
⑤ 入管法第5条に定める上陸拒否事由に該当しないこと
許可された場合は、新千歳空港、成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港、広島空港、福岡空港においては、パスポートに上陸許可の証印がされるとともに、上陸許可により「日本人の配偶者等」の在留資格を取得した方は、空港で「在留カード」の交付を受けます。
〇よく一緒に読まれている記事
・ 台湾人による配偶者ビザ申請②:夫婦ともに台湾など海外在住であるケース
・ 台湾人による配偶者ビザ申請③:台湾人が日本で自ら申請し、出国して結果を待つケース
・ 台湾人による配偶者ビザ申請④:中長期の在留資格から変更するケース
・ 台湾人による配偶者ビザ申請⑤:短期の在留資格から変更するケース
・ 台湾人による配偶者ビザ申請⑥:前婚の日本人と離婚して、別の日本人と結婚するケース
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
国際結婚と配偶者ビザ